FP1級 2017年9月 応用編 問64
Aさん(68歳)は、非上場会社のX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長である。金属製品製造業を営むX社は、その技術力が業界内で高く評価されており、近年の業績は好調であるが、過去には経営が困難であった時期もあり、その際にAさん個人がX社に貸し付けた5,000万円が現在もそのまま残っている。
Aさんは、最近、自身の健康面に不安を感じることが多くなった。また、X社の専務取締役を務めている長男Cさん(42歳)が十分に経験を積み、後継者として周囲の理解も得られたことから、長男Cさんに事業を承継して勇退することを検討している。Aさんは、子どもたちの仲は良好であるため特に心配はしていないが、長男Cさん以外の子どもたちにはそれぞれ資金援助をすることで、長男Cさんに事業を承継することに対する理解を得たいと考えている。
X社の概要およびAさんに関する資料は、以下のとおりである。
〈X社の概要〉
Aさんは、最近、自身の健康面に不安を感じることが多くなった。また、X社の専務取締役を務めている長男Cさん(42歳)が十分に経験を積み、後継者として周囲の理解も得られたことから、長男Cさんに事業を承継して勇退することを検討している。Aさんは、子どもたちの仲は良好であるため特に心配はしていないが、長男Cさん以外の子どもたちにはそれぞれ資金援助をすることで、長男Cさんに事業を承継することに対する理解を得たいと考えている。
X社の概要およびAさんに関する資料は、以下のとおりである。
〈X社の概要〉
- 業種 金属製品製造業
- 資本金等の額 5,000万円(発行済株式総数100,000株、すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)
- 株主構成 Aさんが100%保有
- 株式の譲渡制限 あり
- X社株式の評価(相続税評価額)に関する資料
- X社の財産評価基本通達上の規模区分は「中会社の大」である。
- X社は、特定の評価会社には該当しない。
- 比準要素の状況
- すべて1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額である。
- 類似業種の1株(50円)当たりの株価の状況
課税時期の属する月の平均株価 200円
課税時期の属する月の前月の平均株価 202円
課税時期の属する月の前々月の平均株価 198円
課税時期の前年の平均株価 194円
課税時期の属する月以前2年間の平均株価 192円
- Aさんの親族関係図
- Aさんが保有する財産(相続税評価額)
- 現預金
- 8,000万円
- 上場株式
- 3,000万円
- X社株式
- 1億5,000万円
- X社への貸付金
- 5,000万円
- 自宅(建物)
- 1,000万円
- 自宅(敷地400㎡)
- 4,000万円(※)
- 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額
- Aさんが加入している生命保険の契約内容
- 保険の種類
- 終身保険
- 契約年月
- 1988年4月
- 契約者(=保険料負担者)・被保険者
- Aさん
- 死亡保険金受取人
- 妻Bさん
- 死亡保険金額
- 5,000万円
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問64
《設例》の〈Aさんに関する資料〉に基づき、仮にAさんが現時点(2024年9月10日)で死亡して相続が開始した場合の相続税の総額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は万円単位とすること。なお、自宅の建物および敷地は妻Bさんが相続するものとし、自宅の敷地について「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けるものとする。
万円 |
正解
7,036(万円) ・課税価格の合計額
4,000万円-(4,000万円×330㎡400㎡×80%)=1,360万円 5,000万円-(500万円×4)=3,000万円 8,000万円+3,000万円+15,000万円+5,000万円+1,000万円+1,360万円+3,000万円 =36,360万円 ・遺産に係る基礎控除額 3,000万円+(600万円×4)=5,400万円 ・課税遺産総額 36,360万円-5,400万円=30,960万円 ・相続税の総額 30,960万円×12×40%-1,700万円=4,492万円 30,960万円×16×30%-700万円=848万円 30,960万円×16×30%-700万円=848万円 30,960万円×16×30%-700万円=848万円 4,492万円+848万円+848万円+848万円=7,036万円 |
分野
科目:F.相続・事業承継細目:4.相続と税金
解説
相続税の総額を求める手順は次のとおりです。
課税価格の合計額は、相続や遺贈により財産を取得した各人ごとに計算した課税価格を全員分合計して求めます。遺産に係る基礎控除額は引かないので注意しましょう。Aさんの本来の相続財産とみなし相続財産である死亡保険金を単純に合計すると4億1,000万円になりますが、自宅の敷地については特定居住用宅地等に該当し、死亡保険金については「500万円×法定相続人の数」までが非課税となるので、この2つの減額分を差し引く必要があります。
【小規模宅地等の評価減の特例】
特定居住用宅地等に該当する場合、330㎡までの部分が80%減額されます。自宅敷地は400㎡なので400㎡のうち330㎡の部分について80%減額されます。
4,000万円×330㎡400㎡×80%=2,640万円
【死亡保険金の非課税額】
親族関係図より、Aさんの死亡に係る法定相続人は、妻B・長男C、二男D・長女Eの4人です。したがって、非課税限度額は「500万円×4人=2,000万円」です。
本問では債務控除がありませんので、上記の2つの非課税金額を相続財産から差し引くと、課税価格の合計額は、
4億1,000万円-2,640万円-2,000万円=3億6,360万円
前述のとおり、法定相続人は妻B・長男C、二男D・長女Eの4人で、各人の法定相続分は次のとおりです。
3億6,360万円-5,400万円=3億960万円
この課税遺産総額を法定相続分に従って配分します。
4,492万円+848万円×3人=7,036万円
よって、正解は7,036(万円)です。
- 相続税法上の法定相続人となるべき人、その法定相続人による法定相続分を考える
- 相続税の課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を求める
- 課税遺産総額を法定相続分で各人に配分する
- 各人の取得金額を速算表に当てはめて、法定相続分に応ずる税額を計算する
- 全員分の税額を計算して、相続税の税額とする
課税価格の合計額は、相続や遺贈により財産を取得した各人ごとに計算した課税価格を全員分合計して求めます。遺産に係る基礎控除額は引かないので注意しましょう。Aさんの本来の相続財産とみなし相続財産である死亡保険金を単純に合計すると4億1,000万円になりますが、自宅の敷地については特定居住用宅地等に該当し、死亡保険金については「500万円×法定相続人の数」までが非課税となるので、この2つの減額分を差し引く必要があります。
【小規模宅地等の評価減の特例】
特定居住用宅地等に該当する場合、330㎡までの部分が80%減額されます。自宅敷地は400㎡なので400㎡のうち330㎡の部分について80%減額されます。
4,000万円×330㎡400㎡×80%=2,640万円
【死亡保険金の非課税額】
親族関係図より、Aさんの死亡に係る法定相続人は、妻B・長男C、二男D・長女Eの4人です。したがって、非課税限度額は「500万円×4人=2,000万円」です。
本問では債務控除がありませんので、上記の2つの非課税金額を相続財産から差し引くと、課税価格の合計額は、
4億1,000万円-2,640万円-2,000万円=3億6,360万円
前述のとおり、法定相続人は妻B・長男C、二男D・長女Eの4人で、各人の法定相続分は次のとおりです。
- 妻B … 1/2
- 子CDE … 1/2×1/3=1/6
3億6,360万円-5,400万円=3億960万円
この課税遺産総額を法定相続分に従って配分します。
- 妻B … 3億960万円×1/2=1億5,480万円
- 子CDE … 3億960万円×1/6=5,160万円
- 妻B … 1億5,480万円×40%-1,700万円=4,492万円
- 子CDE … 5,160万円×30%-700万円=848万円
4,492万円+848万円×3人=7,036万円
よって、正解は7,036(万円)です。
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