FP1級 2018年1月 応用編 問57

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 個人事業主であるAさんは、妻Bさんとともに小売業を営むとともに、所有する賃貸マンションから賃貸収入を得ている。Aさんは、妻Bさんが2023年中に病気により入院・通院した際に支払った医療費等について、医療費控除の適用を受けたいと考えている。また、Aさんは、現在、白色申告者であるが、2024年分から青色申告をしてみたいと考えており、その仕組みについて理解したいと思っている。
 Aさんの家族および2023年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2023年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法および減価償却資産の償却方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。

〈Aさんとその家族に関する資料〉
Aさん(50歳)
白色申告者
妻Bさん(50歳)
事業専従者(Aさんの小売業に専従している)
長男Cさん(25歳)
会社員。2023年中に給与収入400万円を得ている。
長女Dさん(21歳)
大学生。2023年中に収入はない。
母Eさん(78歳)
2023年中に老齢基礎年金70万円を受け取っている。
〈Aさんの2023年分の収入等に関する資料〉
  1. ①2023年中における売上高、仕入高等
    c1.png./image-size:472×190
    • 上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、売上原価、下記②の減価償却費および事業専従者控除は含まれていない。
    ②2023年中に取得した減価償却資産(上記①の必要経費には含まれていない)
    c2.png./image-size:530×88
  2. 不動産所得に関する事項
    c3.png./image-size:530×113
  3. 医療費控除に関する事項
    Aさんが2023年中に支払った医療費等は、以下のとおりである。
    1. 妻Bさんの入院に伴って病院に支払った費用
      44万円
      • 妻Bさんの希望により個室を使用したために支払った差額ベッド料16万円と入院時に病院から給付された食事の費用1万5,000円を含んだ金額である。
      • 入院時、病院に限度額適用認定証を提示している。
      • Aさんは、入院治療費について、医療保険から入院給付金14万円を受け取っている。
    2. 妻Bさんの通院に伴って病院に支払った費用
      6万円
    3. 妻Bさんの通院のための電車賃・バス賃(交通費)
      1万円
    4. Aさんの人間ドックの費用
      8万円
      • この検査により、疾病は発見されなかった。
  • 妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんおよび母Eさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
  • Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
  • Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問57

Aさんの2023年分の事業所得の金額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。なお、事業所得の金額の計算上、事業専従者控除額を控除することとし、事業専従者は妻Bさんのみであるものとする。

正解 

 11,620,000(円)
5,000,000円+10,000,000円-5,250,000円=9,750,000円
360,000円×0.25×912×4=270,000円
28,000,000円-500,000円-(5,000,000円+9,750,000円+270,000円)=12,480,000円
860,000円<6,240,000円(=12,480,000円÷2) ∴860,000円
12,480,000円-860,000円=11,620,000円

分野

科目:D.タックスプランニング
細目:3.各種所得の内容

解説

事業所得の金額は、1年間の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算します。

【総収入金額】
売上高が収入金額となります。売上値引・返品高・売上割戻がある場合、売上高から直接控除できるので、

 2,800万円-50万円=2,750万円 … (1)

【必要経費】
必要経費として控除できるのは、収入を得るために要した費用および事業用資産に生じた損失などであり、売上原価、減価償却費、青色事業専従者給与、事業専従者控除などが含まれます。
  1. 資料(3)中に記載されている必要経費
     500万円
  2. 売上原価
    年初の商品棚卸高+年間の仕入高-年末の商品棚卸高で求めます。年末の商品棚卸高については、設例に"棚卸資産の評価方法について届出はしていない"とあるので、原則的評価方法である最終仕入原価法による評価額を使います。
     500万円+1,000万円-525万円=975万円
  3. 減価償却費
    パソコン4台は4月20日から事業用として使われています。減価償却費は日割りではなく月割りで計算し、月の途中から使用開始したときはその月を1カ月分として考えるので、事業用に使用した4月~12月までの9ヶ月分に相当する減価償却費が必要経費となります。設例には"減価償却資産の償却方法について届出はしていない"とあるので、使うのは法定償却方法である定額法です。定額法では取得価額に償却率を乗じて毎年の償却費を求めます。取得価額は「36万円×4台=144万円」、償却率は0.25、使用月数は9カ月なので、
     144万円×0.25×9月12月=27万円
  4. 事業専従者控除額
    その年を通じて6か月を超えて専ら白色事業に従事している者がいるときに、以下の2つのうち低い額の控除を受けられる制度です。
    • 配偶者86万円+それ以外の専従者1人につき50万円
    • 専従者控除適用前の事業所得の金額を「専従者の数+1」で除した額
    "事業専従者は妻Bさんのみ"とあるためとあるため、事業専従者を配偶者1人として上記の2つの額を比べると、
    • 86万円
    • (2,750万円-(500万円+975万円+27万円))÷2=624万円
    なので、2つのうち低い86万円が事業専従者控除の額となります。
以上より、必要経費の合計は、

 500万円+975万円+27万円+86万円=1,588万円 … (2)

(1)~(2)より、事業所得の金額は、

 2,750万円-1,588万円=1,162万円

よって、正解は11,620,000(円)となります。