FP1級 2018年1月 応用編 問58
個人事業主であるAさんは、妻Bさんとともに小売業を営むとともに、所有する賃貸マンションから賃貸収入を得ている。Aさんは、妻Bさんが2024年中に病気により入院・通院した際に支払った医療費等について、医療費控除の適用を受けたいと考えている。また、Aさんは、現在、白色申告者であるが、2025年分から青色申告をしてみたいと考えており、その仕組みについて理解したいと思っている。
Aさんの家族および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2024年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法および減価償却資産の償却方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
Aさんの家族および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2024年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法および減価償却資産の償却方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
- Aさん(50歳)
- 白色申告者
- 妻Bさん(50歳)
- 事業専従者(Aさんの小売業に専従している)
- 長男Cさん(25歳)
- 会社員。2024年中に給与収入400万円を得ている。
- 長女Dさん(21歳)
- 大学生。2024年中に収入はない。
- 母Eさん(78歳)
- 2024年中に老齢基礎年金70万円を受け取っている。
- ①2024年中における売上高、仕入高等
- 上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、売上原価、下記②の減価償却費および事業専従者控除は含まれていない。
- 不動産所得に関する事項
- 医療費控除に関する事項
Aさんが2024年中に支払った医療費等は、以下のとおりである。- 妻Bさんの入院に伴って病院に支払った費用
44万円- 妻Bさんの希望により個室を使用したために支払った差額ベッド料16万円と入院時に病院から給付された食事の費用1万5,000円を含んだ金額である。
- 入院時、病院に限度額適用認定証を提示している。
- Aさんは、入院治療費について、医療保険から入院給付金14万円を受け取っている。
- 妻Bさんの通院に伴って病院に支払った費用
6万円 - 妻Bさんの通院のための電車賃・バス賃(交通費)
1万円 - Aさんの人間ドックの費用
8万円- この検査により、疾病は発見されなかった。
- 妻Bさんの入院に伴って病院に支払った費用
- 妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんおよび母Eさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
- Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
- Aさんとその家族の年齢は、いずれも2024年12月31日現在のものである。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問58
前問《問57》を踏まえ、Aさんの2024年分の課税総所得金額に対する算出所得税額(税額控除前の金額)を計算した下記の表の空欄①~⑥に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。①円 |
②円 |
③円 |
④円 |
⑤円 |
⑥円 |
正解
① 11,320,000(円) |
② 110,000(円) |
③ 1,210,000(円) |
④ 480,000(円) |
⑤ 3,200,000(円) |
⑥ 1,231,600(円) |
分野
科目:D.タックスプランニング細目:2.所得税の仕組み
解説
〔①について〕
総所得金額は、事業所得と不動産所得の合計です。
【事業所得】
(問57より)1,162万円
【不動産所得】
総収入金額-必要経費で計算します。
570万円-630万円=▲60万円
【損益通算】
不動産所得の必要経費には土地の取得に係るものが30万円含まれているので、この額は損益通算の対象となりません。よって、不動産所得の損失のうち損益通算できる額は「60万円-30万円=30万円」です。これを同じ経常所得グループの事業所得から引いて、事業所得の金額は「1,162万円-30万円=1,130万円」です。
以上より、総所得金額は事業所得と同額の1,132万円とわかります。
よって、正解は11,320,000(円)です。
〔②について〕
医療費控除の額は、以下の算式で計算します。Aさんと妻Bさんの医療費を個別検討していきます。
35万円-14万円-10万円=11万円
よって、正解は110,000(円)です。
〔③について〕
合計所得金額が48万円以下である長女Dさんと母Cさんが控除対象扶養親族となります。母Cさんは年金収入を得ていますが、65歳以上の人には最低でも90万円の公的年金等控除額がありますから、合計所得金額は0円となります。
控除額は、19歳以上23歳未満の長女Dさんが特定扶養親族として63万円、70歳以上で同居している母Eさんが同居老親等として58万円です。したがって、Aさんが適用を受けられる扶養控除の額は「63万円+58万円=121万円」となります。
よって、正解は1,210,000(円)です。〔④について〕
基礎控除の額は、納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下であれば48万円となります。①よりAさんの合計所得金額は2,400万円以下とわかります。
よって、正解は480,000(円)です。〔⑤について〕
②~④で求めた額に、社会保険料控除・生命保険料控除を合算した額です。
11万円+130万円+10万円+121万円+48万円=320万円
よって、正解は3,200,000(円)です。
〔⑥について〕
所得金額に対応する所得税額は、総所得金額から所得控除の合計額を引いて課税総所得金額を求め、課税総所得金額を所得税の速算表に当てはめて計算します。
(a)総所得金額は①の1,132万円、(b)所得控除の合計額は⑤の320万円なので、課税総所得金額(a-b)は「1,132万円-320万円=812万円」となります。課税総所得金額を<資料>所得税の速算表に当てはめると、所得金額に対応する算出所得税額は、
8,120,000円×23%-636,000円=1,231,600円
よって、正解は1,231,600(円)です。
総所得金額は、事業所得と不動産所得の合計です。
【事業所得】
(問57より)1,162万円
【不動産所得】
総収入金額-必要経費で計算します。
570万円-630万円=▲60万円
【損益通算】
不動産所得の必要経費には土地の取得に係るものが30万円含まれているので、この額は損益通算の対象となりません。よって、不動産所得の損失のうち損益通算できる額は「60万円-30万円=30万円」です。これを同じ経常所得グループの事業所得から引いて、事業所得の金額は「1,162万円-30万円=1,130万円」です。
以上より、総所得金額は事業所得と同額の1,132万円とわかります。
よって、正解は11,320,000(円)です。
〔②について〕
医療費控除の額は、以下の算式で計算します。Aさんと妻Bさんの医療費を個別検討していきます。
- 入院費用 44万円
- 自己の都合による差額ベッド代や身の回り品の購入費は医療費控除の対象外です。これに対して、入院中の病院で支給される食事は入院代の一部として扱われます。したがって、入院費用のうち医療費控除の対象となるのは、差額ベッド代を引いた「44万円-16万円=28万円」です。
- 通院費用 6万円
- 医師等による診療等を受けるために直接必要な費用なので、6万円全額が医療費控除の対象です。
- 通院のための電車賃・バス賃 1万円
- 通院のために公共交通機関の対価として支払った費用は、医療費控除の対象です。
- 人間ドックの費用 8万円
- 健康診断の費用は、その健康診断で疾病が発見され、医師の指示により引き続き治療に移った場合に限って医療費控除の対象となります。本問では"疾病は発見されなかった"とあるので対象外です。
35万円-14万円-10万円=11万円
よって、正解は110,000(円)です。
〔③について〕
合計所得金額が48万円以下である長女Dさんと母Cさんが控除対象扶養親族となります。母Cさんは年金収入を得ていますが、65歳以上の人には最低でも90万円の公的年金等控除額がありますから、合計所得金額は0円となります。
控除額は、19歳以上23歳未満の長女Dさんが特定扶養親族として63万円、70歳以上で同居している母Eさんが同居老親等として58万円です。したがって、Aさんが適用を受けられる扶養控除の額は「63万円+58万円=121万円」となります。
よって、正解は1,210,000(円)です。〔④について〕
基礎控除の額は、納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下であれば48万円となります。①よりAさんの合計所得金額は2,400万円以下とわかります。
よって、正解は480,000(円)です。〔⑤について〕
②~④で求めた額に、社会保険料控除・生命保険料控除を合算した額です。
11万円+130万円+10万円+121万円+48万円=320万円
よって、正解は3,200,000(円)です。
〔⑥について〕
所得金額に対応する所得税額は、総所得金額から所得控除の合計額を引いて課税総所得金額を求め、課税総所得金額を所得税の速算表に当てはめて計算します。
(a)総所得金額は①の1,132万円、(b)所得控除の合計額は⑤の320万円なので、課税総所得金額(a-b)は「1,132万円-320万円=812万円」となります。課税総所得金額を<資料>所得税の速算表に当てはめると、所得金額に対応する算出所得税額は、
8,120,000円×23%-636,000円=1,231,600円
よって、正解は1,231,600(円)です。
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