FP1級 2018年9月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(58歳)は、妻Bさん(55歳)との2人暮らしである。X社は65歳定年制を採用しているが、再雇用制度が設けられており、その制度を利用して同社に再雇用された場合、最長で70歳まで勤務することができる。Aさんは、65歳になって定年退職した後に他社で再就職する場合と再雇用制度を利用してX社に勤務し続けた場合における雇用保険からの給付や公的年金制度からの老齢給付について理解したいと思っている。
 また、Aさんは、最近、若手社員の間で話題になっている確定拠出年金の個人型年金について知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1960年1月10日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1980年1月から1982年3月までの大学生であった期間(27月)は、国民年金に任意加入していない。
      1982年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(過去の厚生年金基金の加入期間は代行返上されている)。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 1982年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
    • 確定給付企業年金(基金型)の加入者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1963年6月16日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1982年4月から1986年12月まで厚生年金保険の被保険者である。
      1987年1月から2002年9月まで国民年金の第3号被保険者である。
      2002年10月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
  3. 子ども(2人)
    • 長男(30歳)と長女(28歳)がおり、いずれも結婚して独立している。
  • 妻Bさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

Aさんが、65歳の誕生日でX社を退職して再就職しない場合、Aさんが原則として65歳から受給することができる公的年金の老齢給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、以下の〈条件〉と〈資料〉の計算式を利用し、年金額は、2018年度価額に基づいて計算するものとする。また、資料中の「□□□」は、問題の性質上、伏せてある。

  1. 老齢基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
〈条件〉
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    • 総報酬制導入前の厚生年金保険の被保険者期間:252月
    • 総報酬制導入後の厚生年金保険の被保険者期間:261月(65歳到達時点)
  2. 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(2018年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:37万円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:59万6,000円(65歳到達時点)
  3. 妻Bさんは、老齢基礎年金、老齢厚生年金の繰上げ受給は行わないものとする。
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正解 

① 735,464(円)
779,300円×453月480月=735,464円(円未満四捨五入)
② 1,951,273(円)
370,000円×7.1251,000×252月+596,000円×5.4811,000×261月
=1,516,937円(円未満四捨五入)
1,625円×480月-779,300円×453月480月=44,536円(円未満四捨五入)
1,516,937円+44,536円=1,561,473円
1,561,473円+389,800円=1,951,273円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
老齢基礎年金の年金額は、以下の算式で求めます。2018年度の基本年金額は779,300円です。

 基本年金額×保険料納付済月数480月

Aさんは、大学生だったときの27月の未納期間を除き、60歳まで引き続き厚生年金の被保険者となっているので、保険料納付済月数は480月から27月を差し引いた「480月-27月=453月」です。免除期間はないのでそのまま計算します。

 779,300円×453月480月=735,464.3…円
(円未満四捨五入)735,464円

よって、正解は735,464(円)です。

〔②について〕
65歳以上の老齢厚生年金の年金額は、以下の算式で求めます。

 報酬比例部分の額+経過的加算額+加給年金額

【報酬比例部分の額】
次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬月額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が252月、総報酬制導入後が261月なので、報酬比例部分の額は、

 370,000円×7.1251,000×252月+596,000円×5.4811,000×261月
=370円×7.125×252月+596円×5.481×261月
=664,335円+852,602.4…円=1,516,937.4…円
(円未満四捨五入)1,516,937円

【経過的加算額】
厚生年金の被保険者期間の合計は「252+261月=513月」ですが、上限が480月なので480月を使います。20歳以上60歳未満の被保険者期間の月数は、60歳から65歳までの5年分(60月)を差し引いた「513月-60月=453月」です。これを計算式に当てはめると、

 1,625円×480月-779,300円×453480月
=780,000円-735,464.3…円=44,535.6…円
(円未満四捨五入)44,536円

【加給年金額】
次の表の条件を満たすときに支給されます。Aさんの被保険者期間は240月以上であり、妻Bさんは年下です。妻Bさんには63歳から特別支給の老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)が支給されますが、Aさんが65歳になったときに妻Bさんはまだ62歳なので、65歳時点では加給年金額389,800円が加算されます。
以上より、老齢厚生年金の基本年金額は、

 1,516,937円+44,536円+389,800円=1,951,273円

よって、正解は1,951,273(円)です。