FP1級 2019年1月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 自営業者であるAさん(50歳)は、大学卒業後に入社した建設会社を7年前に退職し、父親が経営していた工務店を引き継ぎ、現在に至っている。Aさんは、50歳になったことを契機として、老後の生活資金を準備するために国民年金基金や小規模企業共済制度への加入を検討している。また、Aさんは、今後自分が疾病等により医療費の一部負担金が高額となった場合の国民健康保険の給付や、自分に万一のことがあった場合の公的年金制度の遺族給付について知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1969年1月25日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1989年1月から1991年3月までの大学生であった期間(27月)は、国民年金に任意加入していない。
      1991年4月から2011年12月まで厚生年金保険の被保険者である。
      2012年1月から現在に至るまで国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
    • 2012年1月から現在に至るまで国民健康保険の被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1969年4月8日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1988年4月から1996年4月まで厚生年金保険の被保険者である。
      1996年5月から2011年12月まで国民年金の第3号被保険者である。
      2012年1月から現在に至るまで国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
    • 2012年1月から現在に至るまで国民健康保険の被保険者である。
  3. Cさん(長男、大学生)
    • 1998年5月15日生まれ
  4. Dさん(二男、高校生)
    • 2002年10月10日生まれ
  • 妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • 家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

仮に、Aさんが現時点(2019年1月27日)で死亡し、妻Bさんが遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権を取得した場合、Aさんの死亡時における妻Bさんに係る遺族給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2018年度価額に基づいて計算するものとする。

  1. 遺族基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 遺族厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
〈条件〉
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    • 総報酬制導入前の被保険者期間:144月
    • 総報酬制導入後の被保険者期間:105月
    (注)要件を満たしている場合、300月のみなし計算を適用すること。
  2. 平均標準報酬月額・平均標準報酬額(2018年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:280,000円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:393,000円
  3. 乗率
    • 総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
    • 総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481
  4. 中高齢寡婦加算額
    584,500円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

正解 

① 1,003,600(円)
779,300円+224,300円=1,003,600円
② 385,090(円)
(280,000円×7.1251,000×144月+393,000円×5.4811,000×105月)×34
=385,090円(円未満四捨五入)

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
遺族基礎年金の額は、基本年金額+子の加算です。2018年度の基本年金額と子の加算額は次のとおりです。
  • 基本年金額 779,300円
  • 子の加算 2人目まで:各224,300円、3人目以降:各74,800円
子の加算の対象となるのは年金法上の子に限られます。年金法上の子とは、原則として18歳の年度末(高校3年の年度末)までの子なので、大学生の長男Cさんは対象外、高校生の二男Dさんの1人分だけを加算します。

 779,300円+224,300円=1,003,600円

よって、正解は1,003,600(円)です。

〔②について〕
遺族厚生年金は以下の者が死亡したときに支給されます。ⅰ~ⅲが短期要件、ⅳが長期要件と呼ばれます。
  1. 被保険者であるときに死亡
  2. 被保険者であったときに初診日がある傷病により、初診日から5年以内に死亡
  3. 障害厚生年金1級・2級の受給権者が死亡
  4. 保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が25年以上ある者が死亡
Aさんは国民年金の第1号被保険者ですので、ⅳの条件により遺族厚生年金が支給されることとなります。長期要件では、遺族厚生年金の計算に当たり、300月のみなし計算の適用がないこと、中高齢寡婦加算額の受給要件として240月以上の厚生年金の被保険者期間が必要となる点が異なります。

遺族厚生年金の年金額は、死亡した者の厚生年金の加入記録を基に計算した報酬比例部分の額の4分の3です。報酬比例部分の額は、次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬月額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
Aさんの被保険者期間の合計は300月未満ですが、前述のとおり長期要件では300月のみなし計算がありません。厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が144月、総報酬制導入後が105月なので、報酬比例部分の額は、

 280,000円×7.1251,000×144月+393,000円×5.4811,000×105月
=280円×7.125×144月+393円×5.481×105月
=287,280円+226,173.3…円=513,453.6…円

この時点で端数処理すると誤差が生じる可能性があるので、4分の3を乗じた後に四捨五入をすることに注意です。

 513,453.6…円×34=385,090.0…円
(円未満四捨五入)385,090円

中高齢寡婦加算額は、夫の死亡により遺族厚生年金を受給している年金法上の子のない妻に対して、40歳から65歳まで支給されるものなので、子があり遺族基礎年金を受給できる妻Bさんは対象外となります。

よって、正解は385,090(円)です。