FP1級過去問題 2019年5月学科試験 問32
問32
内国法人に係る法人税における役員給与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。- 役員に対して支給された給与が過大であるかどうかは、支給した法人の業種、資本規模、利益および当該役員の職位によって形式的に判定される。
- 役員に対する定期給与を、事業年度開始の日から6カ月経過後に開催した臨時株主総会により増額改定した場合、原則として、増額改定後の定期給与は定期同額給与に該当せず、増額改定後に支給した全額が損金不算入となる。
- 役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与に該当せず、その支給額の全額が損金不算入となる。
- 業績連動給与は、業務執行役員に対し、利益の状況を示す指標等を基礎として算定されて支給される給与であり、その支給をする法人が同族会社以外の法人である場合に限り、その支給額を損金の額に算入することができる。
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正解 3
問題難易度
肢17.0%
肢210.0%
肢370.9%
肢412.1%
肢210.0%
肢370.9%
肢412.1%
分野
科目:D.タックスプランニング細目:10.法人税
解説
- 不適切。役員給与が過大であるかどうかは実質基準と形式基準に基づき個別に判定されます(法人税法令70条1号)。
- 実質基準
- 法人の業種・資本規模・利益や役員職位などにより相当と認められる金額
- 形式基準
- 株主総会等の決議によって定められている金額
- 不適切。定期同額給与とは、定期的に支給される給与でその事業年度にわたり支給額が同額のものをいいます。事業年度開始日から3カ月を経過するまでに臨時株主総会により増額改定した場合は、定期同額給与と認められますが、3カ月を経過後に増額改定した場合、原則として、増額改定後の増額分の給与は定期同額給与に該当せず、その増額分は損金不算入となります(法人税法令69条1項)。
本肢は「6カ月経過後」の増額ですので、増額分は損金不算入となります。役員に対して支給する定期給与を、事業年度開始の日から6カ月経過後に開催した臨時株主総会により増額改定した場合、原則として、増額改定後の定期給与は定期同額給与に該当せず、増額改定後に支給した全額が損金不算入となる。(2021.5-31-2) - [適切]。事前確定届出給与とは、税務署長に事前に届け出た金額を、役員に対し定められた時期に賞与として支給するもので、その金額は損金に算入することができます。しかし、事前に届け出た金額と実際の支給額が異なる場合は、これに該当しないものとして当該支給額の全額が損金不算入となります。金額の違いの多寡は問いません(法人税法34条1項2号)。役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与として届け出た金額を限度として損金の額に算入することができる。(2023.9-31-3)役員に対して事前確定届出給与として税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、当該役員賞与のうち、増額部分の金額は損金の額に算入することはできず、事前に届け出た金額を限度として、損金の額に算入する。(2021.9-31-2)役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与に該当せず、その支給額の全額が損金不算入となる。(2020.1-30-3)事前確定届出給与において、あらかじめ所轄税務署長に届け出た金額よりも多い金額を支給した場合、損金の額に算入することができる金額は届け出た金額が限度となり、届け出た金額を超える部分の金額は損金の額に算入することができない。(2017.9-31-3)
- 不適切。業績連動給与は、業務執行役員に対し、利益の状況を示す指標等を基礎として算定されて支給される給与であり、その支給額を損金算入することができます。以前はこの給与体系を利用できるのは同族会社以外の法人に限られていましたが、2017年(平成29年)の税制改正により、同族会社であっても非同族会社と完全支配関係がある(完全子会社である)場合は業績連動給与と認められるようになりました(法人税法34条1項3号)。
本肢は「同族会社以外の法人である場合に限り」としているので誤りです。業績連動給与は、業務執行役員に対し、利益等の指標を基礎として算定される額を金銭等で支給する給与であり、その支給をする法人が同族会社以外の法人である場合に限り、その支給額を損金の額に算入することができる。(2023.9-31-4)
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