FP1級過去問題 2017年9月学科試験 問31

問31

内国法人に係る法人税における役員給与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 法人税法上の役員給与は、役員として選任された者に支給される給与に限られ、使用人(従業員)に対する給与が役員給与とみなされることはない。
  2. 6月の定時株主総会において役員に対して支給する定期給与の増額改定を決議し、4月分から6月分までの給与の増額分を7月に一括支給する場合、その支給額は、一括支給する増額分を含め、定期同額給与として損金の額に算入することができる。
  3. 事前確定届出給与において、あらかじめ所轄税務署長に届け出た金額よりも多い金額を支給した場合、損金の額に算入することができる金額は届け出た金額が限度となり、届け出た金額を超える部分の金額は損金の額に算入することができない。
  4. 同族会社のうち、同族会社以外の法人との間に当該法人による完全支配関係があるものについては、その業務執行役員に対して所定の要件を満たす業績連動給与を支給した場合、損金経理を要件としてその支給額を損金の額に算入することができる。

正解 4

問題難易度
肢18.1%
肢213.4%
肢328.5%
肢450.0%

解説

  1. 不適切。使用人であっても、所定の株式所有割合を満たし、その法人の経営に従事していれば法人税法上の役員(みなし役員)となります。みなし役員に支給される給与は、役員給与としてみなされるので、定期同額、事前届出、業績連動のいずれかでなければなりません(法人税法令7条、同71条1項5号)。
    法人税法上の役員給与は、法人の取締役、執行役、監査役などに就任し、役員登記されている者に対して支給する給与とされ、使用人に対して支給する給与が役員給与とされることはない。2021.5-31-1
  2. 不適切。期中に改定をした給与が定期同額給与として認められるためには、改定後から事業年度末(または臨時改定や業績悪化改定)までの支給額が同額でなければなりません。定期給与の改定は事業年度の開始から3カ月を経過するまでに行いますが、役員給与を増額した場合にその事業年度から改定期までの増額分を遡及する形で一括支給すると、定期同額となりません(7月分だけ多くなる)。この場合、その上乗せ分は損金不算入となります(法人税法令69条1項1号)。
  3. 不適切。事前確定届出給与とは、事前に税務署に届出をして支払う給与のことです。届出どおりに支払えば全額を損金算入することができますが、届け出た支給額と実際の支給額が1円でも異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないこととなり、支給額の全額が損金不算入になります(法人税法34条1項2号)。
    役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与として届け出た金額を限度として損金の額に算入することができる。2023.9-31-3
    役員に対して事前確定届出給与として税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、当該役員賞与のうち、増額部分の金額は損金の額に算入することはできず、事前に届け出た金額を限度として、損金の額に算入する。2021.9-31-2
    役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与に該当せず、その支給額の全額が損金不算入となる。2020.1-30-3
    役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与に該当せず、その支給額の全額が損金不算入となる。2019.5-32-3
  4. [適切]。業績連動給与は、業務執行役員に対し、利益の状況を示す指標等を基礎として算定されて支給される給与であり、その支給額を損金算入することができます。以前はこの給与体系を利用できるのは同族会社以外の法人に限られていましたが、2017年(平成29年)の税制改正により、同族会社であっても非同族会社と完全支配関係がある(完全子会社である)場合は業績連動給与と認められるようになりました(法人税法34条1項3号)。
したがって適切な記述は[4]です。