FP1級 2019年5月 応用編 問62

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問62

Aさんが、下記の〈譲渡資産(自宅)および買換資産に関する資料〉に基づき、自宅の建物とその敷地を買い換えた場合、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。

  1. 「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税額および復興特別所得税額、住民税額の合計額はいくらか。
  2. 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」および「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税額および復興特別所得税額、住民税額の合計額はいくらか。
〈譲渡資産(自宅)および買換資産に関する資料〉
  • 譲渡資産の譲渡価額:1億円
  • 譲渡資産の取得費:不明
  • 譲渡費用:300万円
  • 買換資産の取得価額:6,500万円

正解 

① 6,541,400(円)
100,000,000円-65,000,000円=35,000,000円
35,000,000円-(100,000,000円×5%+3,000,000円)×35,000,000円100,000,000円=32,200,000円
32,200,000円×15%=4,830,000円
4,830,000円×2.1%=101,400円(100円未満切り捨て)
4,830,000円+101,400円=4,931,400円
32,200,000円×5%=1,610,000円
4,931,400円+1,610,000円=6,541,400円
② 8,932,300(円)
100,000,000円-(100,000,000円×5%+3,000,000円)-30,000,000円=62,000,000円
60,000,000円×10%+(62,000,000円-60,000,000円)×15%=6,300,000円
6,300,000円×2.1%=132,300円
6,300,000円+132,300円=6,432,300円
60,000,000円×4%+(62,000,000円-60,000,000円)×5%=2,500,000円
6,432,300円+2,500,000円=8,932,300円

分野

科目:E.不動産
細目:5.不動産の譲渡の係る税金

解説

〔①について〕
マイホームの買換え特例の適用を受けると、買換え資産が譲渡資産の取得価額を引き継ぐことで譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。本問のように売った金額よりも買い換えた金額が少ない場合には、その差額が譲渡所得として課税されます。このとき、譲渡益に対応する部分の必要経費だけを計上するのが計算のポイントになっています。
収入金額
1億円-6,500万円=3,500万円
必要経費
取得費が不明なので概算取得費として「1億円×5%=500万円」、譲渡費用300万円を足して800万円
この800万円は、1億円の譲渡対価に要した費用なので、3,500万円分に相当する額だけを必要経費とします。
 800万円×3,500万円1億円=280万円
譲渡所得の計算
3,500万円-280万円=3,220万円
買換え特例の適用を受けると軽減税率の特例を受けられないので、土地建物に係る長期譲渡所得の税率(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)をそのまま乗じて、
  • 所得税等 … 32,200,000円×15.315%=4,931,430円
    (100円未満切り捨て)4,931,400円
  • 住民税 … 32,200,000円×5%=1,610,000円
  • 合計 … 4,931,400円+1,610,000円=6,541,400円
よって、正解は6,541,400(円)となります。

〔②について〕
3,000万円の特別控除後、6,000万円以下の部分に軽減税率の特例を適用するのがポイントです。
収入金額
1億円
必要経費
取得費が不明なので概算取得費として「1億円×5%=500万円」、譲渡費用300万円を足して800万円
譲渡所得の計算
1億円-800万円-3,000万円=6,200万円
譲渡所得の金額が6,000万円を超えるので、6,000万円以下の部分と6,000万円超の部分に異なる税率を適用して税額を求めることになります。
6,000万円以下の部分
所得税等:6,000万円×10.21%=6,126,000円
住民税 :6,000万円×4%=2,400,000円
6,000万円超の部分
所得税等:200万円×15.315%=306,300円
住民税 :200万円×5%=100,000円
全部を合計して、

 6,126,000+2,400,000+306,300+100,000=8,932,300円

よって、正解は8,932,300(円)となります。
所得税と住民税をまとめて税額を求めると100円未満切捨てにより誤差が出てしまうことがあるので、面倒でも別々に計算しましょう。