FP1級 2019年5月 応用編 問63

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 非上場会社のX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんが2024年3月に死亡した。Aさんの死亡後、X社では、専務取締役を務めていたAさんの長男Cさんが事業を引き継いでおり、Aさんが所有していたX社株式はすべて長男Cさんが相続により取得する予定である。長男Cさんは、X社株式の相続にあたり、2018年度税制改正により創設された「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受けることを検討している。
 X社の概要およびAさんに関する資料は、以下のとおりである。なお、長女Dさんは、5年前に病気により死亡している。また、Aさんは、孫Gさんと普通養子縁組(特別養子縁組ではない養子縁組)をしている。

〈X社の概要〉
  1. 業種:食料品製造業
  2. 資本金等の額:7,500万円(発行済株式総数150,000株、すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)
  3. 株主構成
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  4. 株式の譲渡制限:あり
  5. X社株式の評価(相続税評価額)に関する資料
    • X社の財産評価基本通達上の規模区分は「中会社の中」である。
    • X社は、特定の評価会社には該当しない。
    • 比準要素の状況
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      • すべて1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額である。
    • 類似業種の1株(50円)当たりの株価の状況
      課税時期の属する月の平均株価:372円
      課税時期の属する月の前月の平均株価:359円
      課税時期の属する月の前々月の平均株価:363円
      課税時期の前年の平均株価:336円
      課税時期の属する月以前2年間の平均株価:326円
〈Aさんに関する資料〉
  1. Aさんの親族関係図
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  2. Aさんが所有していた相続財産(相続税評価額)
    現預金
    7,000万円
    X社株式
    2億8,000万円
    自宅の建物
    500万円
    自宅の敷地(300㎡)
    6,000万円
    X社本社の建物
    3,000万円
    X社本社の敷地(500㎡)
    7,500万円
    • X社は、相当の対価を支払い、Aさんから本社建物を賃借していた。
    • X社本社の建物および敷地は、貸家および貸家建付地として評価した金額である。
    • 敷地はいずれも「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額である。
  3. Aさんが加入していた生命保険から支払われた死亡保険金
    保険の種類
    終身保険
    契約年月
    1990年4月
    契約者(=保険料負担者)
    Aさん
    被保険者
    Aさん
    死亡保険金受取人
    妻Bさん
    死亡保険金額
    6,000万円
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問63

《設例》の〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、端数処理は、各要素別比準割合および比準割合は小数点第2位未満を切り捨て、1株当たりの資本金等の額50円当たりの類似業種比準価額は10銭未満を切り捨て、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額は円未満を切り捨てること。
なお、X社株式の類似業種比準価額の算定にあたり、複数の方法がある場合は、できるだけ低い価額となる方法を選択するものとする。

正解 

 2,268(円)
7,500万円÷150,000株=500円
326円×5.5円4.8円41円38円336円261円3×0.6×500円50円
=326円×1.14+1.07+1.283×0.6×500円50円
=326円×1.16×0.6×10
=226.8円×10
=2,268円

分野

科目:F.相続・事業承継
細目:5.相続財産の評価(不動産以外)

解説

類似業種比準価額は、本問のように主として大会社・中会社である非上場会社の株式を同族株主が贈与・相続等により取得した場合、株式の算定に用いる方法です(財評通180~184)。

類似業種比準価額は、類似業種の1株当たりの価格を基礎として、次の算式により配当金額、利益金額、簿価純資産額の3つの要素を比較することで、非上場株式の価格を求めます。なお、計算式中ではすべて1株当たり資本金等の額を50円としたときの金額を用います。
類似業種比準価額では、配当金額と利益金額が□□□円になっていたり、複数の業種目の価額を比較するなどの問題も出題されますが、本問はどちらもないので素直な問題と言えます。

まず、対象となる類似業種の株価を選びます。類似業種の株価は、①評価月、②前月、③前々月、④前年の平均、⑤直近2年間の平均のうち最も低いものを選択します。5つの株価のうち最も低いのは、直近2年間の平均株価326円なのでこれを使います。

斟酌率の基準となる会社の規模は中会社なので、斟酌率は0.6です。計算式に従って類似業種比準価額を求めます。

 326円×5.5円4.8円41円38円336円261円3×0.6
=326円×1.14+1.07+1.283×0.6(小数点第2位未満切り捨て)
=326円×1.16×0.6(小数点第2位未満切り捨て)
=226.8円(10銭未満切り捨て)

この額は1株当たり50円としたときの価額なので、X社の実際の1株当たり資本金等の額に相当する額に還元します。X社の1株当たり資本金等の額は「7,500万円÷15万株=500円」なので、計算した金額に乗じる1株当たりの資本金等の額の50円に対する倍数は「500円÷50円=10倍」です。計算の意味としては50で割って1円当たりの金額を求め、それを500倍する形です。

 226.8円×500円50円=226.8円×10倍=2,268円

したがって正解は2,268(円)となります。