FP1級 2019年9月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(39歳)は、妻Bさん(35歳)、長男Cさん(3歳)および二男Dさん(0歳)との4人暮らしである。Aさんは、今月40歳を迎えることもあり、公的介護保険について知りたいと思っている。また、Aさんは、子どもがまだ小さいことから、自分が就業できない状態になった場合や死亡した場合に労働者災害補償保険や公的年金制度からどのような給付が受けられるのかについても知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1979年9月15日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1998年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 1998年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
    • X社は労働者災害補償保険の適用事業所である。
  2. Bさん(妻)
    • 1984年6月13日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      2003年4月から2015年3月まで厚生年金保険の被保険者である。
      2015年4月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
    • Aさんが加入する健康保険の被扶養者である。
  3. Cさん(長男)
    • 2016年6月10日生まれ
  4. Dさん(二男)
    • 2019年2月20日生まれ
  • 妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • 家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

仮に、Aさんが現時点(2019年9月8日)で死亡し、妻Bさんが遺族基礎年金および遺族厚生年金の受給権を取得した場合、Aさんの死亡時における妻Bさんに係る遺族給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2019年度価額に基づいて計算するものとする。

  1. 遺族基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 遺族厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
〈条件〉
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    • 総報酬制導入前の被保険者期間:60月
    • 総報酬制導入後の被保険者期間:197月
    (注)要件を満たしている場合、300月のみなし計算を適用すること。
  2. 平均標準報酬月額・平均標準報酬額(2019年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:208,000円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:322,000円
  3. 乗率
    • 総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
    • 総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481
  4. 中高齢寡婦加算額
    585,100円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

正解 

① 1,229,100(円)
780,100円+224,500円+224,500円=1,229,100円
② 382,239(円)
(208,000円×7.1251,000×60月+322,000円×5.4811,000×197月)×300月257月×34
=382,239円(円未満四捨五入)

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
遺族基礎年金の額は、基本年金額+子の加算です。2019年度の基本年金額と子の加算額は次のとおりです。
  • 基本年金額 780,100円
  • 子の加算 2人目まで:各224,500円、3人目以降:各74,800円
子の加算の対象となるのは年金法上の子に限られます。年金法上の子とは、原則として18歳の年度末(高校3年の年度末)までの子なので、3歳の長男Cさん・0歳の二男Dさんの2人分を加算します。

 780,100円+224,500円+224,500円=1,229,100円

よって、正解は1,229,100(円)です。

〔②について〕
Aさんが厚生年金の被保険者であるときに死亡した場合なので「短期要件」に該当します。短期要件に該当する場合には、遺族厚生年金の計算に当たり、300月のみなし計算の適用があり、中高齢寡婦加算額について被保険者期間の要件がありません。

遺族厚生年金の年金額は、死亡した者の厚生年金の加入記録を基に計算した報酬比例部分の額の4分の3です。報酬比例部分の額は、次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬月額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が60月、総報酬制導入後が197月なので、報酬比例部分の額は、

 208,000円×7.1251,000×60月+322,000円×5.4811,000×197月
=208円×7.125×60月+322円×5.481×197月
=88,920円+347,681.754円=436,601.754円

この時点で端数処理すると誤差が生じる可能性があるので、4分の3を乗じた後に四捨五入をすることに注意です。また、Aさんは短期要件に該当し、被保険者期間の合計が「60月+197月=257月」と300月未満なので、300月のみなし計算の対象となります。

 436,601.754円×300月257月×34=382,238.8…円
(円未満四捨五入)382,239円

中高齢寡婦加算額は、夫の死亡により遺族厚生年金を受給している年金法上の子のない妻に対して、40歳から65歳まで支給されるものなので、子があり遺族基礎年金を受給できる妻Bさんは対象外となります。

よって、正解は382,239(円)です。