FP1級 2020年1月 応用編 問58

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 個人事業主であるAさんは、妻Bさんと小売業を営むとともに、所有する賃貸マンションから賃貸収入を得ている。Aさんは、営んでいる事業が軌道に乗り、さらなる拡大を企図して、将来的に法人化することを検討している。
 Aさんは、2024年中に、非上場株式の配当金を受け取った。この配当金については、総合課税により配当控除の適用を受ける予定である。また、加入していた生命保険契約を解約し、解約返戻金を受け取った。
 Aさんの家族構成および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2024年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。

〈Aさんとその家族に関する資料〉
Aさん(50歳)
青色申告者
妻Bさん(50歳)
2024年中に青色事業専従者として給与収入80万円を得ている。
長女Cさん(24歳)
大学院生。2024年中の収入はない。
長男Dさん(20歳)
大学生。2024年中にアルバイトにより給与収入100万円を得ている。
〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉
  1. 事業所得に関する事項
    ①2024年中における売上高、仕入高等
    c1.png/image-size:298×173
    • 上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、当該必要経費には、青色事業専従者給与は含まれているが、売上原価および下記②の減価償却費は含まれていない。
    ②2024年中に取得した減価償却資産(上記①の必要経費には含まれていない)
    c2.png/image-size:537×90
    • 償却方法は法定償却方法とする。
  2. 不動産所得に関する事項
    c3.png/image-size:537×114
  3. Aさんが2024年中に受け取った非上場株式の配当金に関する事項
    配当金額:60万円(源泉所得税控除前)
    • その支払の際に、所定の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されている。
    • 当該非上場株式を取得するための負債の利子はない。
  4. Aさんが2024年中に解約した生命保険に関する事項
    保険の種類
    一時払変額個人年金保険(10年確定年金)
    契約年月
    2014年8月
    契約者(=保険料負担者)
    Aさん
    被保険者
    Aさん
    解約返戻金額
    370万円
    正味払込済保険料
    300万円
  • 妻Bさん、長女Cさん、長男Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
  • Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
  • Aさんとその家族の年齢は、いずれも2024年12月31日現在のものである。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問58

Aさんの2024年分の事業所得の金額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。なお、Aさんは、正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳し、それに基づき作成した貸借対照表および損益計算書等を確定申告書に添付して、e-Taxによって確定申告期限内に提出するものとし、事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除額を控除すること。

正解 

 17,200,000(円)
7,100,000円+75,000,000円-7,450,000円=74,650,000円
480,000円×0.25×6月12月=60,000円
(99,600,000円-140,000円)-(6,900,000円+74,650,000円+60,000円)-650,000円
=17,200,000円

分野

科目:D.タックスプランニング
細目:3.各種所得の内容

解説

事業所得の金額は、1年間の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算します。また、本問の条件より、青色申告特別控除額も控除する必要があります。

【総収入金額】
売上高が収入金額となります。売上値引・返品高・売上割戻がある場合、売上高から直接控除できるので、

 9,960万円-14万円=9,946万円 … (1)

【必要経費】
必要経費として控除できるのは、収入を得るために要した費用および事業用資産に生じた損失などであり、売上原価、減価償却費、青色事業専従者給与、事業専従者控除などが含まれます。
  1. 資料①中に記載されている必要経費
     690万円(青色事業専従者給与含む)
  2. 売上原価
    年初の商品棚卸高+年間の仕入高-年末の商品棚卸高で求めます。
     710万円+7,500万円-745万円=7,465万円
  3. 減価償却費
    車両1台は7月12日から事業用として使われています。減価償却費は日割りではなく月割りで計算し、月の途中から使用開始したときはその月を1カ月分として考えるので、事業用に使用した7月~12月までの6ヶ月分に相当する減価償却費が必要経費となります。法定償却方法とは定額法であり、定額法では取得価額に償却率を乗じて毎年の償却費を求めます。取得価額は48万円、償却率は0.25、使用月数は6カ月なので、
     48万円×0.25×6月12月=6万円
以上より、必要経費の合計は、

 690万円+7,465万円+6万円=8,161万円 … (2)

【青色申告特別控除額】
Aさんは青色申告者であり、複式簿記に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書を確定申告期限内に提出し、さらにe-Taxによる申告を行うため、(3)65万円の青色申告特別控除額を適用できます。

(1)~(3)より、事業所得の金額は、

 9,946万円-8,161万円-65万円=1,720万円

よって、正解は17,200,000(円)となります。