FP1級過去問題 2020年9月学科試験 問50

問50

2018年7月6日に成立し、同月13日に公布された「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(改正相続法)により創設された配偶者居住権および配偶者短期居住権に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 配偶者居住権は、相続開始後に配偶者が対象となる建物を引き続き居住の用に供していれば、その設定の登記をすることなく、第三者に対抗することができる。
  2. 配偶者居住権は、他者に譲渡することはできず、取得した配偶者が死亡した場合には、当然に消滅して相続の対象とならない。
  3. 配偶者短期居住権を取得することができる配偶者は、相続開始時において、被相続人が所有していた建物に無償で居住し、かつ、被相続人との婚姻期間が20年以上である者とされている。
  4. 配偶者短期居住権は、遺産分割により対象となる建物の帰属が確定した日または相続開始の時から10カ月を経過する日のいずれか遅い日までの間、当該建物を無償で使用することができる権利である。

正解 2

問題難易度
肢113.7%
肢262.0%
肢311.9%
肢412.4%

解説

配偶者居住権と配偶者短期居住権についてざっくりと確認しておきましょう。
配偶者居住権
相続対象となった建物の価値を所有権と居住権に分け、所有権を子が、居住権を配偶者が取得することで、配偶者が終身その自宅に住み続けられる仕組み。長期の配偶者居住権は遺産分割で取得するか、遺贈の目的とされることが必要。また配偶者居住権は設定登記をしなければならない。
配偶者短期居住権
配偶者が相続人の所有していた建物に無償で住んでいた場合、上記の配偶者居住権(長期)を取得していなくても、①遺産分割により建物の帰属が確定した日、または②相続開始日から6カ月後のいずれか遅い日まで、引き続きその自宅に無償で住み続ける権利。
  1. 不適切。配偶者居住権を第三者(例えばその自宅を譲り受けた者)に対抗するためには登記が必要です。配偶者が対象の建物を引き続き居住の用に供しているだけでは、第三者に対し居住権を主張することができません。居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います(民法1031条)。
    配偶者居住権は、譲渡することはできないが、配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得れば、当該居住建物を第三者に使用させることができる。2022.9-44-4
  2. [適切]。配偶者居住権は一身専属的な権利なので、譲渡することができません(民法1032条2項)。配偶者の死亡により存続期間が終了するので、相続の対象とはなりません(民法1030条)。
  3. 不適切。配偶者短期居住権は、被相続人の所有する建物に無償で居住していた配偶者であれば婚姻期間に関係なく取得できます(民法1037条1項)。
    被相続人の配偶者は、相続開始時に被相続人が所有する建物に無償で居住していた場合は、原則として、相続開始時から最低6カ月間、引き続き無償でその建物を使用することができる権利を取得する。2019.5-50-1
  4. 不適切。10か月を経過する日ではありません。配偶者短期居住権の効力期間は、①遺産分割により建物の帰属が確定した日、または②相続開始日から6カ月後のいずれか遅い日までです(民法1037条1項)。
したがって適切な記述は[2]です。