FP1級 2020年9月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(39歳)は、2020年10月末日付けでX社を退職し、個人事業主として、同年11月から妻Bさん(38歳)と2人で飲食店を開業する予定であり、退職後の社会保険や将来の公的年金の老齢給付について知りたいと考えている。また、Aさんは、老後の生活資金を準備するために国民年金基金や確定拠出年金の個人型年金への加入を検討している。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんにアドバイスを求めることにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1980年10月23日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      2000年10月から2003年3月までの大学生であった期間(30月)は、学生納付特例制度により保険料納付の猶予を受けている。なお、当該保険料について追納はしていない。
      2003年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(過去に厚生年金基金の加入期間はない)。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 2003年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1982年4月15日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      2002年4月から2005年3月まで国民年金の第1号被保険者である。
      2005年4月から2012年9月まで厚生年金保険の被保険者である。
      2012年10月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
    • Aさんが加入する健康保険の被扶養者である。
  • 妻Bさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

Aさんが、2020年10月末日付けでX社を退職し、同年11月から60歳に達するまでの期間(239月)について、国民年金の第1号被保険者として国民年金の定額保険料と付加保険料を納付した場合、Aさんが原則として65歳から受給することができる公的年金の老齢給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、《設例》の〈Aさんの家族に関する資料〉および下記の〈条件〉に基づき、年金額は2020年度価額に基づいて計算するものとする。

  1. 老齢基礎年金の年金額と付加年金の年金額の合計額はいくらか。
  2. 老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
〈条件〉
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    211月
  2. 平均標準報酬額
    37万1,000円(2020年度再評価率による額)
  3. 報酬比例部分の給付乗率
    1,000分の5.481
  4. 経過的加算額
    53.png/image-size:535×73
  5. 加給年金額
    39万900円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

正解 

① 780,644(円)
781,700円×450月480月=732,844円(円未満四捨五入)
200円×239月=47,800円
732,844円+47,800円=780,644円
② 429,366(円)
371,000円×5.4811,000×211月=429,058円(円未満四捨五入)
1,630円×211月-781,700円×211月480月=308円(円未満四捨五入)
429,058円+308円=429,366円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
老齢基礎年金の年金額は、以下の算式で求めます。2020年度の基本年金額は781,700円です。

 基本年金額×保険料納付済月数480月

Aさんは、大学生だったときに30月の保険料納付猶予期間があります。保険料納付猶予期間は、年金の受給資格期間には算入されますが、追納をしなければ保険料納付月数には反映されません。その後は現在まで厚生年金被保険者であり、退職後は60歳まで第1号被保険者として保険料を納付します。したがって、保険料納付済月数は480月から30月を差し引いた「480月-30月=450月」です。免除期間はないのでそのまま計算します。

 781,700円×450月480月=732,843.7…円
(円未満四捨五入)732,844円

付加年金の額は「200円×付加保険料納付済月数」で求めます。Aさんの付加保険料納付済月数は239月のため、

 200円×239月=47,800円

したがって、老齢基礎年金と付加年金の合計額は、

 732,844円+47,800円=780,644円

よって、正解は780,644(円)です。

〔②について〕
65歳以降に受け取る老齢厚生年金の年金額は、以下の算式で求めます。

 報酬比例部分の額+経過的加算額+加給年金額

【報酬比例部分の額】
次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
Aさんの厚生年金被保険者期間は211月(すべて総報酬制導入後)なので、報酬比例部分の額は、

 371,000円×5.4811,000×211月=429,058.1…
 371円×5.481×211月=429,058.1…円
(円未満四捨五入)429,058円

【経過的加算額】
厚生年金の被保険者期間の合計は211月、20歳以上60歳未満の被保険者期間の月数も同じ211月です。これを計算式に当てはめると、

 1,630円×211月-781,700円×211月480月=307.7…円
(円未満四捨五入)308円

【加給年金額】
以下の条件を満たすときに支給されます。Aさんの厚生年金被保険者期間は211月であり、240月(20年)未満なので支給対象外となります。
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以上より、老齢厚生年金の基本年金額は、

 429,058円+308円=429,366円

よって、正解は429,366(円)です。