FP1級 2020年9月 応用編 問59(改題)
問59
「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(以下、「本制度」という)に関する以下の文章ⅠおよびⅡの下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。なお、本問においては、2023年4月1日から2024年3月31日までの事業年度を当期という。- 〈適用要件〉
本制度は、国内雇用者に対して給与等を支給する青色申告法人が所定の要件を満たす場合に適用を受けることができるが、その要件は、一定の中小企業者等(以下、「中小企業」という)とそれ以外の法人(以下、「大企業」という)で異なっている。当期において本制度の適用を受ける場合、大企業では、継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えていること、①継続雇用者に対する当期の給与等支給額がその継続雇用者に対する前期の給与等支給額の102%以上であることが必要である。
他方、中小企業では、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えていること、②雇用者全体に対する当期の給与等支給額がその雇用者全体に対する前期の給与等支給額の101.5%以上であることが必要である。
なお、法人の資本金の額又は出資金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である法人が適用を受ける場合には、③給与等の支給額の引上げの方針、下請事業者その他の取引先との適切な関係の構築の方針その他の事業上の関係者との関係の構築の方針に関する一定の事項を公表していることなどの要件を満たす必要があります。 - 〈税額控除額〉
本制度による税額控除額についても、中小企業と大企業では異なっている。当期において本制度の適用を受ける場合、大企業では、上乗せ措置を考えなければ、継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額(給与等支給増加額)の15%相当額であるが、①雇用者に対する当期の教育訓練費の額が前期の教育訓練費の額の年平均額の120%以上であることを要件として、給与等支給増加額に乗ずる割合が5%加算される。
他方、中小企業では、原則として、給与等支給増加額の15%相当額であるが、雇用者全体に対する当期の給与等支給額がその雇用者全体に対する前期の給与等支給額の102.5%以上であり、かつ、雇用者に対する当期の教育訓練費の額が前期の教育訓練費の額の110%以上であること等を要件として、給与等支給増加額に乗ずる割合が10%加算される。
なお、税額控除することができる金額は、③法人が中小企業であるか大企業であるかを問わず、当期における法人税額の25%相当額が限度である。
Ⅰ | |
Ⅱ |
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正解
Ⅰ | ① 国内設備投資額が当期償却費総額の95%以上であることが要件となる。 |
Ⅱ | ③ 税額控除することができる金額は、当期における法人税額の20%相当額が限度である。 |
分野
科目:D.タックスプランニング細目:10.法人税
解説
〔Ⅰについて〕本特例は、大企業と中小企業で適用要件、税額控除割合に違いがあります。
- 大企業
- 前年と比べて継続雇用者給与等支給額が3%(4%)以上増加した場合に、その増加額の15%(25%)を税額控除
前年と比べて教育訓練費が20%増加していれば、控除割合を5%加算 - 中小企業
- 前年と比べて給与等支給増加額が1.5%(2.5%)以上増加した場合に、その増加額の15%(30%)を税額控除
前年と比べて教育訓練費が10%増加していれば、控除割合を10%加算

本特例による税額控除額は、大企業・中小企業にかかわらず、適用年度の法人税額の20%が限度となります。
よって、③の「25%」が誤りで、正しくは「20%」となります。
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