FP1級過去問題 2021年5月学科試験 問40

問40

Aさんは、2023年10月に自己の居住用財産を2,000万円で譲渡し、同月中に住宅借入金を利用して新たな居住用財産を3,000万円で取得した。下記の〈条件〉に基づき、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

〈条件〉
  1. 譲渡資産の内容等
    • 譲渡価額:2,000万円
    • 取得費と譲渡費用の合計額:5,000万円
    • 譲渡契約日の前日の譲渡資産に係る住宅借入金の残高:3,000万円
    • 譲渡資産の土地等の面積:300㎡
    • Aさんの2023年分の給与所得の金額:780万円(その他の所得はない)
  2. 買換資産の内容等
    • 取得価額:3,000万円
    • 2023年12月31日時点の買換資産に係る住宅借入金の残高:2,000万円
  1. 本特例の適用を受けるためには、譲渡した居住用財産の所有期間が2023年1月1日において10年を超えていなければならない。
  2. 本特例の適用を受けた場合、2024年以降に繰り越すことができる譲渡損失の金額は、220万円である。
  3. 本特例の適用を受けて繰り越した譲渡損失の金額を、2024年分の総所得金額等から控除するためには、2024年12月31日において譲渡資産に係る住宅借入金の残高がなければならない。
  4. 本特例の適用を受ける場合であっても、買換資産に係る住宅借入金について、所定の要件を満たせば、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができる。

正解 4

問題難易度
肢116.3%
肢215.3%
肢319.5%
肢448.9%

解説

「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」は、マイホームを買い換えた際に旧宅の譲渡によって譲渡損失が生じた場合に、通常は分離課税であるその損失を他の所得から控除(損益通算)でき、その年に控除しきれなかった額は翌年以後3年以内の各年の総所得金額等から控除できる特例措置です。主な適用要件は次のとおりです。
  1. 譲渡した年、または家屋を取り壊した年の1月1日時点で所有期間が5年超であること
  2. 住んでいる家を売るか、住まなくなった日から3年後の12月31日までに売ること
  3. 新宅の居住用に供する床面積が50㎡以上であること
  4. 新宅を取得した年の12月31日までに居住開始(見込み含む)しており、その年の12月31日において新宅について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること
  5. (繰越控除だけの要件)
    適用は敷地面積500㎡以下の部分に限る
    適用を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
  1. 不適切。10年ではありません。本特例の適用を受けるための要件のひとつは、譲渡した居住用財産の所有期間が、譲渡する年または家屋を取り壊した年の1月1日時点で5年超であることです。
  2. 不適切。本特例の適用を受けると、旧宅の譲渡による損失を他の所得から控除すること(損益通算)ができ、控除しきれなかった損失額は翌年以降3年にわたり繰越控除できます。譲渡損失は「5,000万円-2,000万円=3,000万円」ですので、これを当年の給与所得から控除すると「780万円-3,000万円=▲2,220万円」となるため、翌年以降に繰り越せるのは控除しきれなかった2,220万円となります。
  3. 不適切。譲渡資産に係る住宅ローンではありません。本特例の適用を受けるためには、買換資産(新宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有していなければなりません。
    本特例の繰越控除の適用を受けるためには、原則として、その適用を受けようとする年の1月1日において、譲渡資産に係る一定の住宅借入金等を有していることが必要である。2015.1-39-2
  4. [適切]。住宅ローン控除は、新居に居住した年とその前2年間、後3年間の期間(計6年間)に、3,000万円の特別控除、軽減税率の特例、買換え特例の適用を受けている場合には、適用を受けることはできません。本特例(損益通算及び繰越控除の特例)は上記に含まれていないので、所定の要件を満たせば住宅借入金等特別控除との併用が可能です。
    Aさんが、2024年中に自宅を買い換え、本特例の適用を受けた場合、新たな住宅の購入に住宅ローンを利用したときであっても、当該住宅ローンについて住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできない。2018.9-40-1
したがって適切な記述は[4]です。