FP1級 2021年5月 応用編 問52(改題)
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(55歳)は、妻Bさん(53歳)との2人暮らしである。X社は、65歳の定年制を採用しているが、再雇用制度が設けられており、その制度を利用して同社に再雇用された場合、最長で70歳まで勤務することができる。Aさんは、定年退職後の働き方を検討する前提として、公的年金制度からの老齢給付や雇用保険からの給付について知りたいと思っている。また、Aさんは、現在入院中の母Cさん(78歳)が退院後に介護が必要となることから、介護休業を取得した場合の雇用保険からの給付についても知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。
〈Aさんの家族に関する資料〉
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。
〈Aさんの家族に関する資料〉
- Aさん(本人)
- 1965年11月5日生まれ
- 公的年金の加入歴
1985年11月から1988年3月までの大学生であった期間(29月)は国民年金に任意加入していない。
1988年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(過去に厚生年金基金の加入期間はない)。 - 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
- 1988年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
- Bさん(妻)
- 1967年6月21日生まれ
- 公的年金の加入歴
1986年4月から1991年4月まで厚生年金保険の被保険者である。
1991年5月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。 - Aさんが加入する健康保険の被扶養者である。
- Cさん(母)
- 1942年7月3日生まれ
- 後期高齢者医療制度の被保険者である。
- 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
- 老齢基礎年金および遺族厚生年金を受給している。
- Aさんとは住居を別にしており、今後もAさんと同居する予定はない。
- 妻Bさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
- Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問52
Mさんは、Aさんに対して、65歳以後の在職老齢年金および雇用保険の高年齢求職者給付金について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。- 〈在職老齢年金〉
「65歳以上の厚生年金保険の被保険者に支給される老齢厚生年金は、その受給権者の老齢厚生年金の報酬比例部分の額に基づく基本月額と総報酬月額相当額との合計額が(①)円(支給停止調整額、2024年度価額)を超える場合、報酬比例部分の額の一部または全部が支給停止となります。総報酬月額相当額とは、受給権者である被保険者の標準報酬月額とその月以前1年間の(②)の総額を12で除して得た額との合計額です。
仮に、Aさんが65歳以後も厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務した場合に、Aさんの老齢厚生年金の報酬比例部分の額に基づいて計算した基本月額が12万5,000円、総報酬月額相当額が40万円であるとすると、支給される老齢厚生年金の報酬比例部分の額(月額)は(③)円となります。
なお、老齢厚生年金は、その支給を繰り下げることによって年金額を増額することができ、70歳到達月に繰下げ支給の申出をした場合の増額率は(④)%になります。ただし、老齢厚生年金の年金額のうち、在職支給停止の仕組みにより支給停止される部分の金額は、増額の対象となりません」 - 〈高年齢求職者給付金〉
「Aさんが65歳以後にX社を退職して再就職を希望する場合、Aさんは、所定の手続により、雇用保険の高年齢求職者給付金を受給することができます。
高年齢求職者給付金は一時金で支給されます。その額は、原則として、算定基礎期間が1年未満の場合は基本手当日額に(⑤)日を乗じて得た額となり、算定基礎期間が1年以上の場合は基本手当日額に(⑥)日を乗じて得た額となります。基本手当日額は、原則として、被保険者期間として計算された最後の(⑦)カ月間に支払われた賃金(賞与等を除く)の総額を基に算出した賃金日額に、当該賃金日額に応じた給付率を乗じて得た額となります。
高年齢求職者給付金の支給を受けようとする場合は、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしたうえ、失業していることについての認定を受ける必要があり、その受給期限は離職の日の翌日から(⑧)年となっています」
①円 |
② |
③円 |
④% |
⑤日 |
⑥日 |
⑦カ月 |
⑧年 |
正解
① 500,000(円) |
② 標準賞与額 |
③ 112,500(円) |
④ 42(%) |
⑤ 30(日) |
⑥ 50(日) |
⑦ 6(カ月) |
⑧ 1(年) |
分野
科目:A.ライフプランニングと資金計画細目:5.公的年金
解説
〔①について〕
2024年度における支給停止調整開始額は50万円です。この額は毎年4月1日に改定されます。
厚生年金の被保険者として勤務しながら老齢厚生年金を受給している人は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整開始額を超えると、在職老齢年金の仕組みにより、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。
〔②について〕
総報酬月額相当額とは、厚生年金の標準報酬月額に、過去1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額を加えた額です。仮に標準報酬月額が30万円、過去1年の標準賞与額の総額が84万円だったとすると、総報酬月額相当額は「30万円+(84万円÷12)=37万円」です。
よって、正解は標準賞与額となります。
〔③について〕
総報酬月額相当額と基本年金額(報酬比例部分)の合計が、支給停止調整開始額を上回る場合に、その超えた部分の2分の1に相当する年金が支給停止となるのが在職老齢年金の仕組みです。Aさんのケースを当てはめると、
〔④について〕
年金の繰下げを請求すると、年金額は繰下げ1月当たり0.7%の割合で増額されます。70歳到達月に繰下げの請求をした場合、5年(=60月)繰り下げることになるので、増額率は「0.7%×60月=42%」です。
よって、正解は42(%)となります。
〔⑤、⑥について〕
高年齢求職者給付金は、65歳以上の高年齢被保険者に対して雇用保険の基本手当の代わりに支給されるもので、算定基礎期間(雇用保険の被保険者であった期間)が1年未満の人は基本手当日額の30日分、1年以上の人は50日分が一時金として支給されます。よって、⑤は30(日)、⑥は50(日)が正解となります。
〔⑦について〕
雇用保険の基本手当の日額は、被保険者期間の最後6か月間の賃金(臨時賃金、賞与を除く)を180で除した賃金日額(上限・下限あり)に、賃金日額に応じた50%(60歳以上65歳未満の人は45%)から80%の給付率を乗じて得た金額となります。
基本手当の日額=6か月間の賃金(賞与等を除く)180×50%(45%)~80%
よって、正解は6(カ月)となります。
〔⑧について〕
高年齢求職者給付金を支給を受けるには、離職日の翌日から起算して1年以内に公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしたうえで、失業の認定を受けなければなりません。なお、高年齢求職者給付金は一時金なので、一般被保険者と異なり1回だけ失業の認定を受ければOKです。
よって、正解は1(年)となります。
2024年度における支給停止調整開始額は50万円です。この額は毎年4月1日に改定されます。
厚生年金の被保険者として勤務しながら老齢厚生年金を受給している人は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が支給停止調整開始額を超えると、在職老齢年金の仕組みにより、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。
- 基本月額
- 老齢厚生年金のうち報酬比例部分の額(繰下げによる増加分は除く)を月換算した額
- 総報酬月額相当額
- その月の標準報酬月額と、その月以前1年間の標準賞与額の合計を月換算した額の合計額
〔②について〕
総報酬月額相当額とは、厚生年金の標準報酬月額に、過去1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額を加えた額です。仮に標準報酬月額が30万円、過去1年の標準賞与額の総額が84万円だったとすると、総報酬月額相当額は「30万円+(84万円÷12)=37万円」です。
よって、正解は標準賞与額となります。
〔③について〕
総報酬月額相当額と基本年金額(報酬比例部分)の合計が、支給停止調整開始額を上回る場合に、その超えた部分の2分の1に相当する年金が支給停止となるのが在職老齢年金の仕組みです。Aさんのケースを当てはめると、
- 総報酬月額相当額+基本年金額
- 125,000円+400,000円=525,000円
- 支給停止調整開始額を超える額
- 525,000円-500,000円=25,000円
- 支給停止額(1月当たり)
- 25,000円÷2=12,500円
- 支給される報酬比例部分の額
- 125,000円-12,500円=112,500円
〔④について〕
年金の繰下げを請求すると、年金額は繰下げ1月当たり0.7%の割合で増額されます。70歳到達月に繰下げの請求をした場合、5年(=60月)繰り下げることになるので、増額率は「0.7%×60月=42%」です。
よって、正解は42(%)となります。
〔⑤、⑥について〕
高年齢求職者給付金は、65歳以上の高年齢被保険者に対して雇用保険の基本手当の代わりに支給されるもので、算定基礎期間(雇用保険の被保険者であった期間)が1年未満の人は基本手当日額の30日分、1年以上の人は50日分が一時金として支給されます。よって、⑤は30(日)、⑥は50(日)が正解となります。
〔⑦について〕
雇用保険の基本手当の日額は、被保険者期間の最後6か月間の賃金(臨時賃金、賞与を除く)を180で除した賃金日額(上限・下限あり)に、賃金日額に応じた50%(60歳以上65歳未満の人は45%)から80%の給付率を乗じて得た金額となります。
基本手当の日額=6か月間の賃金(賞与等を除く)180×50%(45%)~80%
よって、正解は6(カ月)となります。
〔⑧について〕
高年齢求職者給付金を支給を受けるには、離職日の翌日から起算して1年以内に公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしたうえで、失業の認定を受けなければなりません。なお、高年齢求職者給付金は一時金なので、一般被保険者と異なり1回だけ失業の認定を受ければOKです。
よって、正解は1(年)となります。
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