FP1級 2021年5月 応用編 問64

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問64

仮に、Aさんが現時点(2023年5月23日)において死亡し、孫Eさんに係る相続税の課税価格が600万円、相続税の課税価格の合計額が1億2,000万円である場合、①相続税の総額および②孫Eさんの納付すべき相続税額をそれぞれ求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は万円単位とすること。
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万円
万円

正解 

① 700(万円)
3,000万円+(600万円×5人)=6,000万円
1億2,000万円-6,000万円=6,000万円
6,000万円×1/2×15%-50万円=400万円
6,000万円×1/6×10%=100万円
6,000万円×1/6×10%=100万円
6,000万円×1/12×10%=50万円
6,000万円×1/12×10%=50万円
400万円+100万円+100万円+50万円+50万円=700万円
② 42(万円)
700万円×600万円1億2,000万円=35万円
35万円+35万円×0.2=42万円

分野

科目:F.相続・事業承継
細目:4.相続と税金

解説

〔①について〕
課税遺産総額を法定相続分に従って配分したときの、各人の相続税額を合計した額となります。なので、まずは法定相続人を明らかにする必要があります。

〈Aさんの親族関係図〉を見ると、妻Bに加え、子として長女Cおよび普通養子である孫Eと孫F、普通養子Dを代襲相続する孫Gと孫Hがいます。実子がいる場合には法定相続人の数に算入できる養子の数は1名に制限されますが、このとき次の3パターンに該当する者は養子であっても「みなし実子」として扱われるため、養子の数として法定相続人にカウントしなくても良いという点に注意が必要です。
  • 特別養子縁組による養子
  • 被相続人の配偶者の実子である養子
  • 養子を代襲相続する被相続人の直系卑属(養子縁組後に生まれた子)
孫Gと孫Hは上記3つ目に該当するため実子としてカウントします。実子3人に加えて、孫Eと孫Fのうち1人が法定相続人の数にカウントされることになるので、法定相続人の数は5人です。

課税遺産総額は、相続税の課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を引いた額です。遺産に係る基礎控除額は「3,000万円×600万円×5人=6,000万円」なので、課税遺産総額は「1億2,000万円-6,000万円=6,000万円」となります。

課税遺産総額を法定相続分に従って配分すると、
  • 妻Bさん … 6,000万円×1/2=3,000万円
  • 長女Cさん・普通養子1人 … 6,000万円×1/6=1,000万円
  • 孫Gさん・孫Hさん … 6,000万円×1/12=500万円
各人の相続税額は、
  • 妻Bさん … 3,000万円×15%-50万円=400万円
  • 長女Cさん・普通養子1人 … 1,000万円×10%=100万円
  • 孫Gさん・孫Hさん … 500万円×10%=50万円
以上より相続税の総額は、

 400万円+100万円×2人+50万円×2人=700万円

よって、正解は700(万円)です。

〔②について〕
各人ごとの相続税額は、相続税の総額にその相続人が取得した課税価格を乗じて得た額となります。

 相続税の総額×各人の課税価格課税価格の合計額

相続税の課税価格の合計額は1億2,000万円、孫Eさんに係る相続税の課税価格は600万円なので、孫Eさんの相続税額は、

 700万円×600万円1億2,000万円=35万円

実際に納付する税額は上記の額に、相続税額の2割加算を加え、未成年控除、障害者控除、暦年課税の贈与税額控除、相続時精算課税の贈与税額控除等を適用した額となります。
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上記のうち孫Eさんに関係するのは「相続税額の2割加算」です。孫Eさんは、被相続人の配偶者、父母、子供以外の者ですから、税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額が加算されます。税額控除は何もないのでこの額が孫Eさんの納付すべき相続税額となります。

 35万円×1.2=42万円

よって、正解は42(万円)です。