FP1級 2023年1月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社に勤務するAさん(54歳)は、妻Bさん(49歳)、長男Cさん(19歳)および二男Dさん(16歳)との4人暮らしである。
 Aさんは、昨年同僚が病気により長期入院したことから、自分が疾病等により入院した場合の健康保険の給付や、自分に万一のことがあった場合の公的年金制度の遺族給付について知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1968年4月25日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1988年4月から1991年3月までの大学生であった期間(36月)は、国民年金に任意加入していない。
      1991年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1973年4月9日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1993年4月から1996年3月までの大学生であった期間(36月)は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
      1996年4月から2001年12月まで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
      2002年1月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
    • Aさんが加入する健康保険の被扶養者である。
  3. Cさん(長男)
    • 2003年3月5日生まれ
  4. Dさん(二男)
    • 2006年5月10日生まれ
  • 妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • 家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

Aさんが現時点(2023年1月22日)で死亡し、妻Bさんが遺族基礎年金、遺族厚生年金および遺族年金生活者支援給付金の受給権を取得した場合、Aさんの死亡時における妻Bさんに係る遺族給付について、下記の〈条件〉に基づき、次の①~③に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、年金額および給付金の額は年額とし、2022年度価額に基づいて計算するものとする。

  1. 遺族基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 遺族厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
  3. 遺族年金生活者支援給付金の額(年額:2023年度価額)はいくらか。
〈条件〉
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    • 総報酬制導入前の被保険者期間:144月
    • 総報酬制導入後の被保険者期間:237月
  2. 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(2022年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:300,000円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:530,000円
  3. 報酬比例部分の給付乗率
    • 総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
    • 総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481
  4. 中高齢寡婦加算額
    583,400円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

正解 

① 1,001,600(円)
777,800円+223,800円=1,001,600円
② 747,201(円)
(300,000円×7.1251,000×144月+530,000円×5.4811,000×237月)×34
=747,201円(円未満四捨五入)
③ 61,680(円)
5,140円×12月=61,680円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
遺族基礎年金の額は、基本年金額+子の加算です。2022年度の基本年金額と子の加算額は次のとおりです。
  • 基本年金額 777,800円
  • 子の加算 2人目まで:各223,800円、3人目以降:各74,600円
子の加算の対象となるのは年金法上の子に限られます。年金法上の子とは、原則として18歳の年度末(高校3年の年度末)までの子なので、19歳の長男Cさんは対象外、16歳の二男Dさんの1人分だけを加算します。

 777,800円+223,800円=1,001,600円

よって、正解は1,001,600(円)です。

〔②について〕
Aさんが厚生年金の被保険者であるときに死亡した場合なので「短期要件」に該当します。短期要件に該当する場合には、遺族厚生年金の計算に当たり、300月のみなし計算の適用があり、中高齢寡婦加算額について被保険者期間の要件がありません(本問では関係ありません)。

遺族厚生年金の年金額は、死亡した者の厚生年金の加入記録を基に計算した報酬比例部分の額の4分の3です。報酬比例部分の額は、次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬月額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が144月、総報酬制導入後が237月なので、報酬比例部分の額は、

 300,000円×7.1251,000×144月+530,000円×5.4811,000×237月
=300円×7.125×144月+530円×5.481×237月
=307,800円+688,468.41円=996,268.41円

この時点で端数処理すると誤差が生じる可能性があるので、4分の3を乗じた後に四捨五入をすることに注意です。

 996,268.41円×34=747,201.3…円
(円未満四捨五入)747,201円

中高齢寡婦加算額は、夫の死亡により遺族厚生年金を受給している年金法上の子のない妻に対して、40歳から65歳まで支給されるものなので、子があり遺族基礎年金を受給できる妻Bさんは対象外となります。

よって、正解は747,201(円)です。

〔③について〕
年金生活者支援給付金は、国民年金から年金給付を受けている一定以下の所得の者に対して毎月5,000円程度が支給される加算制度です。老齢・障害・遺族の年金ごとにあります。2023年度における遺族年金生活者支援給付金の額は、毎月5,140円なので年額だと、

 5,140円×12月=61,680円

よって、正解は61,680(円)です。