FP1級過去問題 2024年5月学科試験 問3

問3

全国健康保険協会管掌健康保険の高額療養費に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、被保険者は70歳未満であるものとする。
  1. 被保険者の自己負担限度額は、療養のあった月の被保険者の標準報酬月額等に応じた5つの所得区分に応じて設定されている。
  2. 高額療養費の算定上、合算する医療費の一部負担金等の額は、支払った医療機関等が同一であっても、医科診療と歯科診療に分けて、かつ、入院診療と外来診療に分けて、別個に算出する。
  3. 入院時の食事療養および生活療養に係る費用、差額ベッド代や保険適用となっていない医療行為に係る費用は、高額療養費の算定上、いずれも合算の対象とならない。
  4. 同一の世帯に属している夫妻がいずれも被保険者である場合、高額療養費の算定上、同一月内にそれぞれが医療機関等で支払った一部負担金等の額を合算することができ、その合算した額のうち自己負担限度額を超えた額が高額療養費として支給される。

正解 4

問題難易度
肢111.6%
肢214.1%
肢317.9%
肢456.4%

解説

  1. 適切。高額療養費の自己負担限度額は、年齢および所得状況等により設定され、被保険者が70歳未満である場合の自己負担限度額は、標準報酬月額に応じた4区分と市区町村民税の非課税者等の1区分を合計した5区分で設定されています(健保法令42条1項)。
    被保険者が70歳未満である場合の自己負担限度額(高額療養費算定基準額)は、療養のあった月の被保険者の標準報酬月額に応じた4区分および被保険者が市町村民税非課税者等である場合の区分の5つの所得区分に応じて設定されている。2018.9-2-1
  2. 適切。高額療養費の算定上、合算対象となる医療費の自己負担金は、同じ医療機関でも入院・通院は別々に、同じ医療機関でも医科と歯科は別々に計算します。「医科・入院」「医科・通院」「歯科・入院」「歯科・通院」に分けて自己負担額を計算し、21,000円以上のものが高額療養費の合算対象になります(健保法令43条9項・10項)。
    高額療養費の算定上、合算することができる医療費の一部負担金等は、被保険者または被扶養者が同一月内にそれぞれ医療機関等に支払ったもので、所定の基準により算出された金額が2万1,000円以上のものとされている。2020.1-2-1
    高額療養費の算定上、合算する医療費の一部負担金等の額は、支払った医療機関等が同一であっても、医科診療と歯科診療に分けて、かつ、入院診療と外来診療に分けて、別個に算出する。2020.1-2-2
  3. 適切。医療機関等から交付された院外処方せんにより調剤薬局で支払った費用は対象になりますが、入院時の食事代などの食事療養、食事提供や温度・照明・給水など適切な療養環境の形成である生活療養、公的医療保険の適用外である差額ベッド代等は、高額療養費の対象となる費用には含まれません(健保法令41条1項)。
    入院時の食事療養および生活療養に係る費用、差額ベッド代や保険外診療に係る費用、医療機関等から交付された院外処方せんにより調剤薬局で支払った費用は、高額療養費の算定上、いずれも対象とならない。2020.1-2-3
  4. [不適切]。健康保険の高額療養費で一部負担金を合算できるのは、被保険者とその被扶養者が支払った費用に限られます。夫婦共働き等で70歳未満の人がともに健康保険の被保険者である場合、各々が独立したグループになり同一世帯とはみなされません。よって、一緒に暮らしていても一部負担金を合算することはできません。
    夫妻のいずれもが70歳未満の被保険者で、同一の世帯に属している場合には、同一月内にそれぞれが医療機関等で支払った一部負担金等の額を合算することができ、その合算した額のうち自己負担限度額(高額療養費算定基準額)を超えた額が高額療養費として払い戻される。2018.9-2-2
したがって不適切な記述は[4]です。