FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問2

問2

全国健康保険協会管掌健康保険(以下、「健康保険」という)の高額療養費に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、被保険者は70歳未満であるものとし、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 高額療養費の算定上、差額ベッド代や保険適用となっていない医療行為に係る費用は合算の対象とならないが、入院時生活療養費に係る生活療養標準負担額や入院時食事療養費に係る食事療養標準負担額は合算の対象となる。
  2. 同居している夫婦がともに健康保険の被保険者である場合において、夫婦のそれぞれが医療機関等で支払った一部負担金等の額は、高額療養費の算定上、同一月中に支払ったものであっても合算することができない。
  3. 高額療養費の算定上、健康保険の被保険者の自己負担限度額(高額療養費算定基準額)は、当該被保険者が療養を受けた月における標準報酬月額、被扶養者の数および高額療養費多数回該当の有無に応じて決定される。
  4. 2025年6月から8月の3カ月間、国民健康保険の高額療養費の支給を受けた者が、2025年9月1日から健康保険の被保険者となり、2025年9月に受けた療養について健康保険の高額療養費の支給を受ける場合、高額療養費多数回該当により自己負担限度額(高額療養費算定基準額)が軽減される。

正解 2

問題難易度
肢117.7%
肢253.0%
肢311.8%
肢417.5%

解説

  1. 不適切。被保険者等が支払った一部負担金等のうち、医療にかからない場合でも必要となる入院時の居住費(生活療養標準負担額)や食事代(食事療養標準負担額)、患者の希望によってサービスを受ける差額ベッド代、保険適用外の医療行為に係る費用などは、高額療養費の対象とはなりません(健保法105条)。
  2. [適切]。健康保険の高額療養費には、被保険者と被扶養者のグループ内で一部負担金等を合算できる「世帯合算」という仕組みがあります。本肢のように、夫婦がともに健康保険の被保険者である場合、各々が独立したグループとなるため世帯合算は行われません(健保法令41条)。
    同一の世帯に属している夫妻がいずれも被保険者である場合、高額療養費の算定上、同一月内にそれぞれが医療機関等で支払った一部負担金等の額を合算することができ、その合算した額のうち自己負担限度額を超えた額が高額療養費として支給される。2024.5-3-4
  3. 不適切。高額療養費の自己負担限度額は、年齢(70歳以上・未満)と所得状況、多数回該当の有無によって変わります。被扶養者の数は無関係です(健保法令42条1項)。
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  4. 不適切。健康保険の高額療養費には、過去1年間に高額療養費の支給を受けた月数が3カ月以上あるとき、4カ月から自己負担限度額が軽減される「多数回該当」という仕組みがあります。この回数は、保険者が同一であれば引き継ぐことができますが、国民健保や組合健保から協会けんぽに移るなど保険者が変わった場合は持ち越せません(健保法令42条1項)。
    本肢では6月~8月で3回対象となっていますが、9月に国民健康保険から健康保険(協会けんぽ)に移っているため、9月分は多数回該当の対象となりません。
    高額療養費の支給を受ける場合において、当該療養があった月以前の12カ月以内に既に3カ月以上、同一の保険者から高額療養費の支給を受けているときは、高額療養費の算定上、自己負担限度額(高額療養費算定基準額)が軽減される。2020.1-2-4
    70歳未満の被保険者が高額療養費の支払を受ける場合において、当該療養があった月以前の12カ月以内に既に3回以上、同一の保険者から高額療養費の支払を受けているときは、自己負担限度額(高額療養費算定基準額)が軽減される。2018.9-2-3
したがって適切な記述は[2]です。