FP1級 2024年9月 応用編 問58
Aさんは、2024年2月末に、31年11カ月勤務した会社を早期退職し、2024年3月1日から個人事業主として妻Bさんと小売業を営んでいる。
Aさんは、2024年中に地震により自宅の一部に損害を受け、地震保険から受け取った保険金と預貯金を修理費用に充てており、雑損控除の適用を受けたいと考えている。
Aさんの家族および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉
Aさんは、2024年中に地震により自宅の一部に損害を受け、地震保険から受け取った保険金と預貯金を修理費用に充てており、雑損控除の適用を受けたいと考えている。
Aさんの家族および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
- Aさん(54歳)
- 青色申告者
- 妻Bさん(50歳)
- 2024年中に青色事業専従者として給与収入120万円を得ている。
〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉
- 事業所得に関する事項
①売上高、仕入高等- 商品棚卸高は、先入先出法による評価額は660万円、移動平均法による評価額は650万円、最終仕入原価法による評価額は670万円である。なお、Aさんは、棚卸資産の評価方法について、税務上の届出はしていない。
- 上記の必要経費は適正に計上されている。なお、当該必要経費には、青色事業専従者給与は含まれているが、売上原価および下記②は含まれていない。
- 退職所得に関する事項
会社から支給を受けた退職金に係る収入金額:3,000万円- 退職金の受給時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。
- 給与所得に関する事項
会社から支給を受けた給与に係る収入金額:160万円 - 地震による損害額と保険金等に関する事項
- 損害金額
- 450万円(下記の災害関連支出は含まれていない)
- 災害関連支出の金額
- 140万円
- 地震保険からの保険金
- 200万円
- 妻Bさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
- Aさんと妻Bさんは、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
- Aさんと妻Bさんの年齢は、いずれも2024年12月31日現在のものである。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問58
《設例》の〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉に基づいて、Aさんの2024年分の①および②の金額をそれぞれ求めなさい。いずれも〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。なお、Aさんは、正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳し、それに基づき作成した貸借対照表および損益計算書等を確定申告書に添付して、確定申告期限内に提出し、かつ、e-Taxによる申告(電子申告)を行うものとし、事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除額を控除すること。また、特に記載のない限り、2024年分の所得税が最も少なくなる課税方法を選択するものとする。
- 退職所得の金額
- 事業所得の金額
①円 |
②円 |
正解
① 6,800,000(円) 30,000,000円-{8,000,000円+700,000円×(32年-20年)}=13,600,000円 13,600,000円×12=6,800,000円 |
② 13,030,000(円) 72,750,000円-6,700,000円=66,050,000円
2,400,000円×0.125×10月12月=250,000円 92,000,000円-(66,050,000円+11,940,000円+250,000円+80,000円)-650,000円 =13,030,000円 |
分野
科目:D.タックスプランニング細目:3.各種所得の内容
解説
〔①について〕
退職所得の金額は「(退職収入ー退職所得控除額)×1/2」で求めます。この式中の退職所得控除額は、勤続年数20年以下か20年超で計算方法が変わります。Aさんの勤続年数は31年11カ月ですので切り上げて32年で計算します。
退職所得控除額 800万円+70万円×(32年-20年)=1,640万円
退職所得の金額 (3,000万円-1,640万円)×1/2=680万円
よって、正解は6,800,000(円)となります。
〔②について〕
事業所得の金額は、1年間の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算します。また、本問の条件より、青色申告特別控除額も控除する必要があります。
【総収入金額】
売上高が収入金額となります。売上値引・返品高・売上割戻がある場合、売上高から直接控除できますが、本問はどれもないので売上高そのままです。
9,200万円 … (1)
【必要経費】
必要経費として控除できるのは、収入を得るために要した費用および事業用資産に生じた損失などであり、売上原価、減価償却費、青色事業専従者給与、事業専従者控除などが含まれます。
1,194万円+6,605万円+33万円=7,832万円 … (2)
【青色申告特別控除額】
Aさんは青色申告者であり、複式簿記に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書を確定申告期限内に提出し、さらにe-Taxによる申告を行うため、(3)65万円の青色申告特別控除額を適用できます。
(1)~(3)より、事業所得の金額は、
9,200万円-7,832万円-65万円=1,303万円
よって、正解は13,030,000(円)となります。
退職所得の金額は「(退職収入ー退職所得控除額)×1/2」で求めます。この式中の退職所得控除額は、勤続年数20年以下か20年超で計算方法が変わります。Aさんの勤続年数は31年11カ月ですので切り上げて32年で計算します。
退職所得控除額 800万円+70万円×(32年-20年)=1,640万円
退職所得の金額 (3,000万円-1,640万円)×1/2=680万円
よって、正解は6,800,000(円)となります。
〔②について〕
事業所得の金額は、1年間の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算します。また、本問の条件より、青色申告特別控除額も控除する必要があります。
【総収入金額】
売上高が収入金額となります。売上値引・返品高・売上割戻がある場合、売上高から直接控除できますが、本問はどれもないので売上高そのままです。
9,200万円 … (1)
【必要経費】
必要経費として控除できるのは、収入を得るために要した費用および事業用資産に生じた損失などであり、売上原価、減価償却費、青色事業専従者給与、事業専従者控除などが含まれます。
- 資料①中に記載されている必要経費
1,194万円(青色事業専従者給与含む) - 売上原価
年初の商品棚卸高+年間の仕入高-年末の商品棚卸高で求めます。年末の商品棚卸高については、設例に"棚卸資産の評価方法について届出はしていない"とあるので、原則的評価方法である最終仕入原価法による評価額を使います。
0円+7,275万円-670万円=6,605万円 - 減価償却費
パソコン1台を8万円で取得しています。使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満の減価償却資産は、減価償却をすることなく取得価額の全額を必要経費に算入することができるので、パソコンに係る減価償却費は8万円です。
機械設備1台は3月10日から事業用として使われています。減価償却費は日割りではなく月割りで計算し、月の途中から使用開始したときはその月を1カ月分として考えるので、事業用に使用した3月~12月までの10ヶ月分に相当する減価償却費が必要経費となります。償却方法について届出はしていないとあるので、償却方法は法定償却方法である定額法です。定額法では取得価額に償却率を乗じて毎年の償却費を求めます。取得価額は240万円、償却率は0.125、使用月数は10カ月なので、
240万円×0.125×10月12月=25万円
したがって減価償却費の合計額は「8万円+25万円=33万円」です。
1,194万円+6,605万円+33万円=7,832万円 … (2)
【青色申告特別控除額】
Aさんは青色申告者であり、複式簿記に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書を確定申告期限内に提出し、さらにe-Taxによる申告を行うため、(3)65万円の青色申告特別控除額を適用できます。
(1)~(3)より、事業所得の金額は、
9,200万円-7,832万円-65万円=1,303万円
よって、正解は13,030,000(円)となります。
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