FP1級 2025年5月 応用編 問52(改題)

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)の役員であるAさん(63歳)は、妻Bさん(52歳)との2人暮らしである。Aさんは、65歳以降もこれまでと同様にX社の役員として勤務を継続するか、65歳でX社を退職して再就職はせず、実家の畑で妻Bさんと野菜作りを楽しみながら過ごすか悩んでおり、65歳以降の社会保険の取扱いや年金の受給額について知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんおよび妻Bさんに関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんおよび妻Bさんに関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1961年11月20日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1981年11月から1984年3月までの大学生であった期間(29月)は国民年金に任意加入していない。
      1984年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1972年10月21日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1992年10月から1995年3月までの大学生であった期間(30月)は国民年金の第1号被保険者として保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
      1995年4月から2002年3月まで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
      2002年4月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
  • 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問52

Aさんが、65歳以降も厚生年金保険の被保険者としてX社で勤務する場合、Aさんが原則として65歳から受給することができる公的年金の老齢給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は2024年度価額、在職老齢年金による支給調整は2025年度価額の支給停止調整額に基づいて計算するものとし、在職定時改定は考慮しないものとする。

  1. 老齢基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 在職老齢年金による支給調整後の老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
〈条件〉
  1. 厚生年金保険の被保険者期間(65歳到達時)
    • 総報酬制導入前の被保険者期間:228月
    • 総報酬制導入後の被保険者期間:283月
  2. 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(65歳到達時、2024年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:380,000円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:490,000円
  3. 報酬比例部分の給付乗率
    • 総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
    • 総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481
  4. 経過的加算額
    52.png/image-size:541×77
  5. 加給年金額
    408,100円(要件を満たしている場合のみ加算すること)
  6. 総報酬月額相当額
    530,000円

正解 

① 766,700(円)
816,000円×451月480月=766,700円
② 1,026,560(円)
380,000円×7.1251,000×228月+490,000円×5.4811,000×283月=1,377,360円(円未満四捨五入)
1,377,360円÷12=114,780円
(530,000円+114,780円-510,000円)×12×12=808,680円
1,377,360円-808,680円=568,680円
1,701円×480月-816,000円×451月480月=49,780円
568,680円+49,780円=618,460円
618,460円+408,100円=1,026,560円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
老齢基礎年金の年金額は、以下の算式で求めます。2024年度の基本年金額は816,000円です。

 基本年金額×保険料納付済月数480月

Aさんは、大学生だったときの29月の未納期間を除き、60歳まで厚生年金に加入しているので保険料納付済月数は480月から29月を差し引いた「480月-29月=451月」です。免除期間はないのでそのまま計算します。

 816,000円×451月480月=766,700円
(円未満四捨五入)766,700円

よって、正解は766,700(円)です。

〔②について〕
65歳以上の老齢厚生年金の年金額は、以下の算式で求めます。

 報酬比例部分の額+経過的加算額+加給年金額

【報酬比例部分の額】
次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が228月、総報酬制導入後が283月なので、報酬比例部分の額は、

 380,000円×7.1251,000×228月+490,000円×5.4811,000×283月
=380円×7.125×228月+490円×5.481×283月
=617,310円+760,050.2…円=1,377,360.2…円
(円未満四捨五入)1,377,360円

【経過的加算額】
厚生年金の被保険者期間の合計は「228月+283月=511月」ですが、上限が480月なので480月を使います。20歳以上60歳未満の被保険者期間の月数は、60歳から65歳までの5年分(60月)を差し引いた「511月-60月=451月」です。これを計算式に当てはめると、

 1,701円×480月-816,000円×451月480月
=816,480円-766,700円=49,780円

【加給年金額】
次の表の条件を満たすときに支給されます。Aさんは被保険者期間が20年以上あり、妻Bさんは年下、さらに妻Bさんは被保険者期間20年以上の老齢厚生年金等を受給していないので、408,100円が加算されます。
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以上より、老齢厚生年金の基本年金額は、

 1,377,360円+49,780円+408,100円=1,835,240円

【在職老齢年金による調整】
老齢厚生年金を受給しながら厚生年金の被保険者として勤務している場合、厚生年金の総報酬月額相当額に年金の基本月額に加えた額が、支給停止調整開始額である51万円を超えると、その超えた部分の2分の1相当額の年金が支給停止されます。支給停止の算定対象となるのは報酬比例部分の額だけで、経過的加算額・加給年金額は常に全額が支給されるので注意しましょう。
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年金の基本月額は、報酬比例部分の年額を12月で除した

 1,377,360円÷12月=114,780円

総報酬月額相当額は530,000円なので、114,780円を足すと、

 530,000円+114,780円=644,780円

51万円を超える部分の2分の1が1月当たりの支給停止額です。年額換算の支給停止額は、

 (644,780円-510,000円)×1/2×12月=808,680円

本来の老齢厚生年金の年金額から上記の額を控除した額が、実際に支給される年金額となります。

 1,835,240円-808,680円=1,026,560円

よって、正解は1,026,560(円)です。