FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問3
問3
労働者災害補償保険(以下、「労災保険」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
- 複数の事業所で雇用される労働者が、そのうち1つの事業所において業務上の事由により負傷した場合、労災保険の給付基礎日額は、原則として、当該労働者を雇用する事業所ごとに算定した給付基礎日額に相当する額のうち、最も高いものとなる。
 - 特別加入者に係る保険料は、原則として、当該特別加入者の前年所得および従事する事業に応じて決定される給付基礎日額に365を乗じて得た額に対し、特別加入保険料率を乗じて算出される。
 - 派遣労働者が派遣先で業務上の事由により負傷した場合は、派遣先事業が労災保険の適用事業とされ、派遣労働者が通勤上の事由により負傷した場合は、派遣元事業が労災保険の適用事業とされる。
 - 労働者が勤務先からの帰宅途中に通勤経路から逸脱し、立ち寄ったスーパーの店内で日用品を購入中に転倒して負傷した場合、その負傷は通勤災害に該当しない。
 
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正解 4
分野
科目:A.ライフプランニングと資金計画細目:4.社会保険
解説
- 不適切。複数事業労働者の給付基礎日額は、それぞれの就業先の事業場ごとに算定した給付基礎日額を合算した額を基礎として決定されます。仮に事業所Aで25万円、事業所Bで10万円の賃金を得ていれば合計の35万円を基に保険給付が算定されるということです。これは、単一の事業所での業務を要因とする労災であっても複数業務要因災害であっても同じです(労災保険法8条3項)。複数の事業所で雇用される労働者が、そのうち1つの事業所において業務上の事由により負傷した場合、労働者災害補償保険の給付基礎日額は、当該労働者を雇用する事業所ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を基礎として算定される。(2022.9-3-2)
 - 不適切。労災保険の特別加入は、労災保険の適用外となる①中小事業主、②一人親方その他の自営業者、③特定作業従事者、④海外派遣者に、労災保険への任意加入を認める制度です。個人事業主等には給与という概念がありませんから、給付額の基礎となる給付基礎日額は3,500円以上25,000円以下の16区分の中から加入者自らが選択します(労災保険法規則46条の20)。保険料は「給付基礎日額×365」に業種に応じて決まる保険料率(特別加入保険料率)を乗じて算出されます(徴収法規則21条~23条の3)。
例)給付基礎日額10,000円×365日×保険料率0.003=年間保険料10,950円 - 不適切。労災保険では、労働者を使用する事業が適用事業(保険関係が成立する事業)とされます。労働者派遣契約では、派遣元事業主と派遣労働者の間に雇用関係があるので、派遣元事業が適用事業となります。したがって、派遣先での業務災害と通勤災害のいずれも、派遣元の労災保険が適用されます(労災保険法3条)。派遣労働者が派遣先で業務災害により負傷した場合は、派遣先事業が労災保険の適用事業とされ、派遣労働者が通勤災害により負傷した場合は、派遣元事業が労災保険の適用事業とされる。(2024.1-3-1)
 - [適切]。通勤途中に日常生活に必要な最小限度を超えて移動の経路を逸脱(寄り道)したり、移動を中断したりした場合は、その後通常の経路に戻って移動したとしても中断の間およびその後は「通勤」とはなりません(労災保険法7条3項)。
どのケースが日常生活に必要であるかは個々の事例によりますが、スーパーで日用品を購入する行為は特段の事情のない限り「日常生活上必要な行為をやむを得ない行為」に該当するので、その後通勤経路に戻ってから負傷した場合は通勤災害に該当します(労災保険法規則8条1号)。労働者が勤務先から帰宅途中に通勤経路から逸脱し、スーパーで日用品を購入後、通勤経路に戻ってから負傷した場合、その逸脱・中断が日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合、その負傷は通勤災害に該当する。(2023.1-2-1) 
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