FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問25

問25

居住者に係る所得税の事業所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 個人事業主が、販売用の棚卸資産を自家消費したときは、事業所得の金額の計算上、原則として、当該棚卸資産の販売価額の50%相当額を総収入金額に算入する。
  2. 個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の遂行上、取引先に対して貸し付けた貸付金の利子は、事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
  3. 個人事業主が、生計を一にする配偶者が所有する建物を賃借して事業所得を生ずべき事業の用に供している場合、事業所得の金額の計算上、その配偶者に支払う家賃は必要経費に算入することができないが、その配偶者が納付した当該建物に係る固定資産税に相当する金額は必要経費に算入することができる。
  4. 個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の用に供した減価償却資産の使用可能期間が1年未満である場合、事業所得の金額の計算上、原則として、その取得価額の全額をその事業の用に供した年分の必要経費に算入する。

正解 1

解説

  1. [不適切]。50%ではありません。棚卸資産を自家消費した場合は、販売価額を総収入金額に算入するのが原則です。ただし、取得価額以上かつ販売価額の70%以上の額を総収入金額に算入しているときは、その金額とすることができます(所基通39-2)。
    販売用の棚卸資産を自家消費したときは、原則として、事業所得の金額の計算上、当該棚卸資産の販売価額の50%相当額を総収入金額に算入する。2024.1-25-4
    個人事業主が販売用の棚卸資産を自家消費したときは、原則として、事業所得の金額の計算上、当該棚卸資産の販売価額の50%相当額を総収入金額に算入する。2021.5-25-1
  2. 適切。事業所得の総収入金額には、取引先への貸付金利子や従業員への貸付金利子のように、事業の遂行に付随して生じた収入も含めます。所得税法に定める利子所得とは「預貯金及び公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得」なので、「取引先に対して貸し付けた貸付金の利子」は利子所得にはなりません。その他、事業遂行に関係のない知人に対する貸付金利子は、利子所得でも事業所得でもなく雑所得となります。
    個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の遂行上、取引先に対して貸し付けた貸付金の利子は、事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。2020.1-25-1
  3. 適切。個人事業主が生計を一にする配偶者その他親族に支払う地代家賃は、必要経費に算入することはできません。逆に受け取っても収入として考えません。一方で、生計を一にする配偶者その他の親族が、その個人事業主が営む事業に関連する経費を支出した場合、それらの金額はその個人事業主の必要経費に算入することができます(所得税法56条)。
    青色申告者である個人事業主が、生計を一にする配偶者が所有する建物を賃借して事業の用に供している場合、当該事業主が配偶者に支払った家賃は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができる。2025.1-25-2
    個人事業主が、生計を一にする親族が所有する土地を賃借して事業所得を生ずべき事業の用に供している場合、事業所得の金額の計算上、当該親族が納付した当該土地に係る固定資産税に相当する金額を必要経費に算入することができる。2020.1-25-3
  4. 適切。使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満の少額減価償却資産は、主要な事業以外の貸付けに供されたものを除き、その取得価額の全額をその年分の必要経費に算入することができます(所得税法令138条)。
    個人事業主が、事業所得を生ずべき事業の用に供している取得価額130万円の車両を売却した場合、事業所得の金額の計算上、当該車両の売却価額を総収入金額に算入し、当該車両の未償却残高を必要経費に算入することができる。2020.1-25-2
したがって不適切な記述は[1]です。