FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問49

問49

財産評価基本通達上の宅地の評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 特定路線価とは、路線価地域内において、相続税や贈与税の課税上、路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合に、当該道路を路線とみなして当該宅地を評価するための路線価であり、納税義務者からの申出等に基づき設定される。
  2. 倍率方式により評価する宅地の価額は、原則として、当該宅地の固定資産税評価額に国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定めた倍率を乗じて計算した金額に、当該宅地の形状にあわせて、奥行価格補正や側方路線影響加算等を行って評価する。
  3. 地積規模の大きな宅地とは、市街化調整区域内に所在する、三大都市圏においては500㎡以上、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積を有する一定の宅地であり、当該宅地の価額は、地積の規模に応じた規模格差補正率を用いて評価する。
  4. 将来、建物の建替え時等に建築基準法の規定に基づき道路敷きとして提供しなければならない部分(セットバック部分)を有する宅地において、当該セットバック部分の価額は、道路敷きとして提供する必要がないものとした場合の価額の70%に相当する価額によって評価する。

正解 1

問題難易度
肢131.6%
肢221.9%
肢336.4%
肢410.1%

解説

  1. [適切]。相続税や贈与税の算定において、路線価地域内の土地の評価額は原則として路線価に基づいて計算されます。しかし、路線価地域内であっても、行き止まりの私道や幅員の狭い公道などの路線価が設定されていない道路に接している宅地が存在します。このような宅地を評価するために税務署に申出をして設定される路線価が「特定路線価」です(財評通14-3)。
  2. 不適切。倍率方式による宅地の評価額は「固定資産税評価額×国税局長が定めた倍率」によります。固定資産税評価額は、すでに不整形地であることなどを考慮した評価額になっているため、路線価方式のような奥行価格補正や側方路線価影響加算は行いません(財評通21-2)。
  3. 不適切。市街化調整区域内は、原則として対象外です。
    地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては地積が500㎡以上の宅地、三大都市圏以外の地域においては地積が1,000㎡以上の宅地をいいます。ただし、面積が基準以上でも次のいずれかに該当する宅地は除かれます(財評通20-2)。
    • 市街化調整区域内の宅地
    • 工業専用地域内の宅地
    • 指定容積率が400%(東京23区においては300%)以上の地域にある宅地
    • 大規模工場用地
    【参考】地積規模の大きな宅地は、土地の面積が広く、そのままでは住宅用地としての利用が難しい状況にあります。そこで、区画を分けて分譲する際のコストを反映するために減価補正が行われます。しかし、市街化調整区域は市街化を抑制する区域で区画分譲が行えないため、原則として対象外とされています。同じ理由で、住宅用地としての利用が見込めない他3つの宅地も除外されています。
    本規定における地積規模の大きな宅地とは、市街化調整区域に所在する宅地等を除き、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地をいう。2021.1-49-1
  4. 不適切。70%ではありません。2項道路に面していて、現在は宅地の一部であっても、将来的に建物の建替えなどの際に道路敷きとして提供することが決まっている部分(いわゆるセットバック部分)がある場合、その部分は私道部分として評価します(財評通24-6)。私道部分の評価額は「通常の宅地としての評価額×30%」となります(財評通24)。
    【参考】道路敷(どうろしき)とは、道路法上の道路およびその付属物(路肩や歩道など)が設けられる土地のことです。
したがって適切な記述は[1]です。