法人税(全69問中2問目)

No.2

法人税における減価償却に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、法人はいずれも製造業を営む内国法人(普通法人)である中小企業者とし、取得した減価償却資産は貸付の用に供するものではないものとする。また、当期とは2024年4月1日から2025年3月31日までの事業年度であるものとする。
2024年9月試験 問30
  1. 当期に取得価額が10万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、その使用可能期間の長短にかかわらず、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。
  2. 当期に取得した取得価額が30万円未満の減価償却資産について「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の適用を受けるためには、常時使用する従業員の数が500人以下でなければならない。
  3. 当期に取得した建物、建物附属設備および構築物については、「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出の有無にかかわらず、定率法を選択することができない。
  4. 当期に中古資産90万円(取得価額40万円、事業の用に供するために支出した資本的支出の金額50万円)を取得して事業の用に供した場合、当該減価償却資産の耐用年数は、原則として、簡便法により算定することができる。

正解 4

問題難易度
肢18.7%
肢229.5%
肢329.2%
肢432.6%

解説

  1. 適切。取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満の少額減価償却資産は、主要な事業以外の貸付けに供されたものを除き、その取得価額の全額を当該事業年度の損金として算入することができます(法人税法令133条)。取得価額が10万円未満であれば使用可能期間を問わず全額を損金算入できます。
    当期に使用可能期間が1年以上である取得価額8万円の減価償却資産を取得して貸付の用に供した場合、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2022.9-32-1
    常時使用する従業員の数が1,000人の青色申告法人である中小企業者が、当期に取得価額25万円の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2022.9-32-2
    当期に取得価額が10万円未満の減価償却資産を取得して事業(貸付けを除く)の用に供した場合、その使用可能期間の長短にかかわらず、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2021.1-30-2
    当期に取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、青色申告法人ではない法人であっても、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2019.5-31-2
    取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の減価償却資産については、青色申告法人ではない法人であっても、事業の用に供した事業年度においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2018.1-31-3
    使用可能期間が1年未満である減価償却資産を取得し、事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する額を損金経理した場合には、当該事業年度において取得価額の全額を損金の額に算入することができる。2015.9-30-1
    取得価額が30万円である減価償却資産を取得し、事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する額を損金経理した場合には、10万円を当該事業年度以後3年間にわたって損金の額に算入することができる。2015.9-30-2
  2. 適切。取得価額30万円未満の減価償却資産について一括して損金算入することができる法人は、青色申告法人である中小企業者等であり、常時使用する従業員の数が500人(電子申告義務のある特定法人は300人)以下の法人に限られます。また、1事業年度に損金算入できるのは300万円までです(措置法令39条の28)。
    当期において取得した取得価額が30万円未満の減価償却資産について「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の適用を受けることができる法人は、中小企業者等で青色申告法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とされている。2021.1-30-3
    当期において取得した取得価額が30万円未満の減価償却資産について「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の適用を受けることができる法人は、中小企業者等で青色申告法人のうち、常時使用する従業員の数が500人以下の法人に限られる。2019.5-31-4
  3. 適切。1998年(平成10年)4月1日以後に取得した建物、および2016年(平成28年)4月1日以降に取得した建物附属設備と構築物は、定額法によって減価償却しなければなりません。それ以前は定率法も認められていましたが、改正により一本化されています(法人税法令48条の2第1項1号イ)。
    2024年中に取得した建物、建物附属設備および構築物については、「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出の有無にかかわらず、定率法を選択することはできない。2018.1-31-2
  4. [不適切]。中古資産を取得して事業の用に供した場合、原則として次のいずれかが耐用年数となります。
    使用可能期間の見積もりが可能な場合(原則)
    事業用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数
    使用可能期間の見積もりが困難な場合(簡便法)
    • 耐用年数の全部が経過した資産 法定耐用年数の20%
    • 耐用年数の一部が経過した資産 (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
    ただし、中古資産を事業に供するために支出した資本的支出の額の割合が、当該中古資産の取得価額の50%を超える場合には簡便法は使用できません(耐用年数省令3条)。本肢は取得価額90万円に対し、資本的支出がその2分の1超の50万円なので簡便法の適用は認められません。
    当期に中古資産80万円(取得価額60万円、事業の用に供するために支出した資本的支出の金額20万円)を取得して事業の用に供した場合、当該資産の耐用年数は、原則として、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として合理的に見積もられた年数によることができる。2022.9-32-4
したがって不適切な記述は[4]です。