FP1級過去問題 2022年9月学科試験 問32

問32

法人税の減価償却等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、法人はいずれも製造業を営む内国法人(普通法人)であるものとし、当期とは2023年4月1日から2024年3月31日までの事業年度であるものとする。
  1. 当期に使用可能期間が1年以上である取得価額8万円の減価償却資産を取得して貸付の用に供した場合、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。
  2. 常時使用する従業員の数が1,000人の青色申告法人である中小企業者が、当期に取得価額25万円の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。
  3. 当期にソフトウエアのプログラム修正を行った場合に、当該修正がプログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときは、その修正に要した費用は資本的支出に該当し、当期においてその全額を損金の額に算入することはできない。
  4. 当期に中古資産80万円(取得価額60万円、事業の用に供するために支出した資本的支出の金額20万円)を取得して事業の用に供した場合、当該資産の耐用年数は、原則として、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として合理的に見積もられた年数によることができる。

正解 4

問題難易度
肢134.1%
肢217.1%
肢311.9%
肢436.9%

解説

  1. 不適切。取得金額が10万円未満もしくは使用可能期間が1年未満の減価償却資産は、その取得金額の全額をその事業年度の損金の額に算入できるのが原則ですが、主要な事業として行われるものを除き、貸付の用に供したものは本特例の適用を受けることができなくなりました(法人税法令133条)。これは、購入した少額減価償却資産(足場、LED照明、ドローンなど)を貸し付けて数年かけて投資額を回収することで課税を繰り延べるスキームを封じるための改正です。
    当期に取得価額が10万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、その使用可能期間の長短にかかわらず、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2021.1-30-2
    当期に取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、青色申告法人ではない法人であっても、当期においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2019.5-31-2
    前期に取得して事業の用に供し、その取得価額の3分の1相当額を損金の額に算入していた一括償却資産を当期に売却した場合、当期において未償却残高である取得価額の3分の2相当額を損金経理により損金の額に算入することができる。2019.5-31-3
    取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の減価償却資産については、青色申告法人ではない法人であっても、事業の用に供した事業年度においてその取得価額の全額を損金経理により損金の額に算入することができる。2018.1-31-3
    使用可能期間が1年未満である減価償却資産を取得し、事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する額を損金経理した場合には、当該事業年度において取得価額の全額を損金の額に算入することができる。2015.9-30-1
    取得価額が30万円である減価償却資産を取得し、事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する額を損金経理した場合には、10万円を当該事業年度以後3年間にわたって損金の額に算入することができる。2015.9-30-2
  2. 不適切。中小企業者等は取得価額30万円未満の減価償却資産(貸付の用に供したものを除く)について、取得金額の全額をその事業年度に一括して損金算入できます。この特例を使えるのは、青色申告法人である中小企業者等で常時使用する従業員数が500人以下の法人に限られます(租税特措法令39条の28)。本肢の企業は、従業員数500人超なので適用を受けることはできません。
  3. 不適切。ソフトウェアについてプログラムの修正等を行った場合のその修正等に要した費用については、その修正等がソフトウェアのプログラムの機能上の障害の除去等に該当する場合には修繕費に該当し、新たな機能の追加等に該当する場合には資本的支出に該当します(法基通7-8-6の2)。
    修繕費はその支出した事業年度の損金に算入できますが、資本的支出は固定資産の価値を増大させるものであるため、原則として資産計上して使用期間にわたって減価償却することになります。本肢のプログラム修正費は修繕費に該当するため、全額をその期の損金に算入することができます。
  4. [適切]。中古資産を取得して事業の用に供した場合には、その資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができます。ただし、中古資産を事業に供するために支出した資本的支出の額の割合が、当該中古資産の再取得価額(新品価格)の50%を超える場合には法定耐用年数を適用しなければなりません(耐用年数省令3条)。
    本肢の中古資産は資本的支出の金額が低いため、使用可能年数を耐用年数として使うことができます。
したがって適切な記述は[4]です。