相続と税金(全61問中2問目)

No.2

相続税の税額控除等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2024年5月試験 問47
  1. 未成年者である相続人が相続の放棄をし、みなし相続財産である死亡保険金のみを受け取って相続税の申告を行う場合、未成年者控除の適用を受けることはできない。
  2. 被相続人との婚姻の届出をした者は、その婚姻期間の長短にかかわらず、「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けることができるが、婚姻の届出をしていないいわゆる内縁関係にある者はその適用を受けることができない。
  3. 相続開始の前年に被相続人から暦年課税による贈与により取得し、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産がある場合、相続税額の計算上、当該財産について課された贈与税額を控除することができるが、相続税額から控除しきれない部分は税額の還付を受けることはできない。
  4. 被相続人が自身の相続開始日の5年前に開始した相続に関して相続税を納付していた場合、当該被相続人の相続財産を取得した相続人に係る相続税額から、当該被相続人が納付した相続税額のうち、一定の割合で逓減した後の金額を控除することができる。

正解 1

問題難易度
肢140.0%
肢29.3%
肢335.1%
肢415.6%

解説

  1. [不適切]。未成年者控除は、下記の適用要件すべてを満たす人の相続税額から「(18-年齢)×10万円」を控除できるものです(※1年未満は1年に切上げ)。
    • 日本国内に住所がある
    • 相続財産を取得したときに18歳未満である
    • 民法上の相続人である(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人であること)
    相続の放棄があった場合でも、相続税法上はその放棄がなかったものとして計算するのが原則です。未成年者控除についても、相続開始日において18歳未満の相続人である等所定の要件を満たせば、相続の放棄の有無にかかわらず適用を受けることができます(相続税法19条の3)。
  2. 適切。「配偶者に対する相続税額の軽減」は法律上の婚姻関係にあれば、婚姻期間の長短にかかわらず適用を受けることができます。内縁関係(事実婚)の状態では適用を受けられません(相続税法19条の2)。
    被相続人との婚姻の届出をした者は、その婚姻期間の長短にかかわらず、「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けることができるが、婚姻の届出をしていないいわゆる内縁関係にある者はその適用を受けることができない。2020.9-48-1
  3. 適切。相続財産を取得した人が、相続開始前7年以内に被相続人から贈与を受けていたときは、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算します。当該贈与財産について贈与税を納付していた場合、その贈与税額はその人の納付相続税額から控除することができます(贈与税額控除)。この暦年課税による贈与税額控除の上限は納付相続税額なので、贈与税額>相続税額となる場合でも税額還付を受けることはできません(相続税法19条)。
    これに対して、相続時精算課税を選択した場合は、贈与時の贈与税額が相続税額よりも上回っていたときは差額の還付を受けることができるという違いがあります。
    被相続人を特定贈与者とする相続時精算課税の適用を受けた相続人は、相続税額から相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税相当額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2023.5-47-2
    被相続人から生前に贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受けていた相続人は、その相続税額から相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税相当額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2020.9-48-4
    相続開始前7年以内に被相続人から暦年課税による贈与により取得し、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産がある場合、相続税額の計算上、当該財産について課された贈与税額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2019.9-45-1
    被相続人から生前に贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受けていた相続人は、その相続税額から相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税相当額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2016.1-47-2
  4. 適切。被相続人が、相続開始前10年以内に相続により財産を取得し、相続税の納付をしていた場合には、先の相続で支払った相続税額のうち一定額が、今回の相続人が支払う相続税額から控除されます。これを「相次相続控除」といい、時期が近い相続において、同一の財産に相続税が複数回課されることを避ける目的があります(相続税法20条)。
    被相続人が当該相続の開始前10年以内に開始した相続により財産を取得していたときは、当該被相続人から相続により財産を取得した相続人は、相続税額から当該被相続人が納付した相続税額に所定の割合を乗じて得た金額を控除することができる。2023.5-47-4
    被相続人がその相続開始前20年以内に相続税を納付していた場合、当該被相続人から相続または遺贈により財産を取得した相続人の相続税額から当該被相続人が納付した相続税額の一定割合を控除することができる。2019.9-45-4
    被相続人がその相続開始前15年以内に相続税を納付していた場合、当該被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者の相続税額から当該被相続人が納付した相続税額の一定割合を控除することができる。2016.1-47-4
したがって不適切な記述は[1]です。