事業承継対策(全17問中7問目)

No.7

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律による「遺留分に関する民法の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2019年9月試験 問49
  1. 本特例の対象となる後継者は、旧代表者の推定相続人のうち、旧代表者から贈与により非上場株式を取得したことにより特例中小企業者の総株主の議決権の過半数を保有し、かつ、合意時点において当該特例中小企業者の代表者である者に限られる。
  2. 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をする場合、旧代表者の推定相続人全員で合意をし、公正証書によりその旨を定めた合意書を作成しなければならない。
  3. 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、併せて、後継者が当該旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の事業用財産について固定合意をすることができる。
  4. 本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。

正解 4

問題難易度
肢115.2%
肢210.8%
肢315.9%
肢458.1%

解説

「遺留分に関する民法の特例」は、後継者が先代経営者から受けた自社株式の贈与の価額について、特別受益による遺留分算定基礎財産への算入から除く制度で、除外合意と固定合意があります。遺留分侵害請求による自社株の分散を防ぐことで、中小企業の安定した事業承継を支援する目的があります。
除外合意
贈与を受けた自社株について、遺留分算定基礎財産に加算しない合意。遺留分侵害請求による自社株の分散を防ぐ
固定合意(株式のみ)
贈与を受けた自社株について、遺留分算定基礎財産に加算する額をの額をあらかじめ合意した時価に固定する合意。後継者の経営努力によって価値上昇した分が加算対象外となるので、経営意欲に悪影響を与えないようになる
  1. 不適切。後継者は旧代表者の推定相続人に限定されません。本特例における後継者の要件は下表のようになっていて、合意時点で代表者であり、旧代表者からの贈与で株式を取得することにより議決権の過半数を保有することになる者であれば、本特例の対象となる後継者に該当します(円滑化法3条3項)。
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    本特例の対象となる後継者は、旧代表者の推定相続人のうち、旧代表者から贈与により非上場株式を取得したことにより特例中小会社の総株主の議決権の過半数を有し、かつ、合意時点において当該特例中小会社の代表者である者に限られる。2024.1-50-1
    本特例の対象となる後継者は、旧代表者の推定相続人のうち、合意時点において特例中小企業者の代表者である者に限られる。2017.1-50-2
  2. 不適切。本特例の適用を受けるには、後継者、旧代表者、旧代表者の推定相続人全員が合意をし、合意書を作成しなければなりません。しかし、その書面は公正証書である必要はありません(円滑化法4条1項)。
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をする場合、旧代表者の推定相続人全員で合意をし、公正証書によりその旨を定めた合意書を作成しなければならない。2024.1-50-2
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について本特例の適用を受けるためには、旧代表者の遺留分を有する推定相続人全員および後継者で合意をし、所定の事項を記載した合意書面を作成しなければならない。2022.5-49-3
  3. 不適切。固定合意は株式にしか使えません。本特例では株式について除外合意または固定合意をする際に、それと併せて、後継者または推定相続人が旧代表者からの贈与等により取得した財産(当該中小会社の株式・事業用資産を除く)について、遺留分算定基礎財産の価額から除外する定めをすることができます(円滑化法5条)。事業用資産についてはそもそも固定合意は使えず、また付随合意によって除外することはできません。
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、併せて、後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の財産について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができる。2024.1-50-3
    除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をした場合、後継者以外の推定相続人が旧代表者からの贈与により取得した財産の価額を遺留分算定基礎財産の価額から除外する旨の定めをすることもできる。2017.1-50-3
  4. [適切]。本特例は、関係者全員の合意から1カ月以内に経済産業大臣に確認の申請をし、その確認を受けた日から1カ月以内に家庭裁判所に許可を申し立てることによって効力を生じます(円滑化法7条・8条)。
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    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に家庭裁判所の確認を申し立て、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申請により、経済産業大臣の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2024.1-50-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2022.5-49-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を得ることによって、その効力を生ずる。2017.1-50-4
したがって適切な記述は[4]です。