事業承継対策(全22問中6問目)

No.6

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律による「遺留分に関する民法の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2022年5月試験 問49
  1. 本特例の対象となる特例中小会社は、資本金の額が3,000万円以下、かつ、3年以上継続して事業を行っている非上場会社に限られる。
  2. 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、当該合意の時における当該株式の価額は、合意時点の相続税評価額ではなく、弁護士、公認会計士、税理士等が相当な価額として証明をしたものになる。
  3. 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について本特例の適用を受けるためには、旧代表者の遺留分を有する推定相続人全員および後継者で合意をし、所定の事項を記載した合意書面を作成しなければならない。
  4. 本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。

正解 1

問題難易度
肢149.5%
肢224.7%
肢312.2%
肢413.6%

解説

「遺留分に関する民法の特例」は、後継者が先代経営者から受けた自社株式の贈与の価額について、特別受益による遺留分算定基礎財産への算入から除く制度で、除外合意と固定合意があります。遺留分侵害請求による自社株の分散を防ぐことで、中小企業の安定した事業承継を支援する目的があります。
除外合意
贈与を受けた自社株について、遺留分算定基礎財産に加算しない合意。遺留分侵害請求による自社株の分散を防ぐ
固定合意(株式のみ)
贈与を受けた自社株について、遺留分算定基礎財産に加算する額をの額をあらかじめ合意した時価に固定する合意。後継者の経営努力によって価値上昇した分が加算対象外となるので、経営意欲に悪影響を与えないようになる
  1. [不適切]。遺留分に関する民法の特例の対象となる特例中小会社は、一定規模以下の中小企業者(中退共に加入できる企業と同じ)のうち、合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場会社とされています。資本金の額は以下のように業種によって基準が変わるので、3,000万円以下という一律の基準ではありません(円滑化法2条、同法規則2条)。
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    本特例の対象となる特例中小会社は、資本金の額または常時使用する従業員の数について業種に応じた基準を満たし、かつ、5年以上継続して事業を行っている非上場会社に限られる。2024.9-50-1
    本特例の対象となる特例中小会社は、資本金の額または出資の総額ならびに常時使用する従業員の数について業種に応じた基準を満たし、かつ、3年以上継続して事業を行っている非上場会社である。2017.1-50-1
  2. 適切。固定合意は、後継者が旧代表者から贈与を受けた株式等の全部または一部について、遺留分の算定基礎財産の価額に算入すべき価額を、当該合意時点における価額に固定する方法です。固定する価額は、弁護士、公認会計士、税理士(各士業法人含む)が、合意時点における時価として証明をした額となります(円滑化法4条1項2号)。
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき当該非上場株式の価額は、原則として、贈与時点における相続税評価額とされる。2024.9-50-4
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、併せて、後継者が当該旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の事業用財産について固定合意をすることができる。2019.9-49-3
  3. 適切。本特例の適用を受けるには、後継者と旧代表者の推定相続人全員が合意をし、合意書を作成しなければなりません。しかし、その書面は公正証書である必要はありません(円滑化法4条1項)。
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をする場合、旧代表者の推定相続人全員で合意をし、公正証書によりその旨を定めた合意書を作成しなければならない。2024.1-50-2
    後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をする場合、旧代表者の推定相続人全員で合意をし、公正証書によりその旨を定めた合意書を作成しなければならない。2019.9-49-2
  4. 適切。本特例は、関係者全員の合意から1カ月以内に経済産業大臣に確認の申請をし、その確認を受けた日から1カ月以内に家庭裁判所に許可を申し立てることによって効力を生じます(円滑化法7条・8条)。
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    本特例の適用を受けるためには、本特例の適用に係る合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより家庭裁判所の許可を受ける必要があるが、その申請および申立ては、後継者が単独で行うことができる。2024.9-50-2
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に家庭裁判所の確認を申し立て、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申請により、経済産業大臣の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2024.1-50-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力を生ずる。2019.9-49-4
    本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に経済産業大臣の確認を申請し、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申立てにより、家庭裁判所の許可を得ることによって、その効力を生ずる。2017.1-50-4
したがって不適切な記述は[1]です。