FP1級過去問題 2015年10月学科試験 問24

問24

資本資産評価モデル(CAPM)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、β(ベータ)値は、すべて1より大きいものとする。
  1. 資本資産評価モデル(CAPM)によるポートフォリオの期待収益率の算出にあたって、安全資産利子率は、一般に、当該ポートフォリオに組み入れる資産の過去の平均収益率を用いる。
  2. β値が高いほど、そのポートフォリオの価格変動は市場全体の価格変動よりも小さく、市場全体に対する相対的なリスクが低いといえる。
  3. 市場全体の期待収益率と安全資産利子率がともに2倍になると、β値が一定であれば、資本資産評価モデル(CAPM)によるポートフォリオの期待収益率も2倍になる。
  4. 資本資産評価モデル(CAPM)により算出されるポートフォリオの期待収益率を上回った超過収益率を測ることによりリスク調整後収益率を測定する手法を、トレイナーの測度という。

正解 3

問題難易度
肢16.9%
肢27.5%
肢356.7%
肢428.9%

解説

資本資産評価モデル(CAPM、キャップエム)は、特定の資産やポートフォリオについて通常期待されるリターンを求めるモデルです。10年物国債の利子などの安全資産利益率と、マーケットプレミアムにβ値を乗じたものの和を期待収益率とします。β値は評価対象ポートフォリオのシステマティック・リスクであり、マーケット全体が1%変化したときに、対象の資産の収益率が何%変化するのかという連動性を表します。
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  1. 不適切。安全資産利子率には無リスク資産(10年物国債など)の利子率を用います。ポートフォリオに組み入れるのはリスク資産ですので、安全資産利子率として使用することはできません。
  2. 不適切。β値は、市場全体の値動きに対する評価対象ポートフォリオの感応度を示したものです。β値が高いほど、そのポートフォリオは市場全体の値動きに強く反応するので、市場に対するリスクは相対的に高くなります。
  3. [適切]。市場全体の期待収益率をM、安全資産利子率をNとして、上記の式で考えると、
     2N+β×(2M-2N)
    =2N+2β×(M-N)
    =2×(N+β(M-N))
    と変換できるため、市場全体の期待収益率と安全資産利子率がともに2倍になると、元の期待収益率の2倍となると言えます。
  4. 不適切。トレイナーの測度ではありません。実現したポートフォリオの収益率から資本資産評価モデル(CAPM)の理論上の期待収益率を差し引いた値で、リスクを取ったことにより得られた超過リターンを表すのは、ジェンセンのアルファ(ジェンセンの測度)です。
    ●α=ポートフォリオの収益率-資本資産評価モデル(CAPM)の収益率
したがって適切な記述は[3]です。