FP1級過去問題 2016年9月学科試験 問35(改題)

問35

不動産売買における売主の契約不適合を担保すべき責任に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 民法で定める契約不適合を担保すべき責任は強行規定であるため、売主および買主の合意があっても、売主が契約不適合を担保すべき責任を負わないとする特約は無効となる。
  2. 宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間が売買契約の締結日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。
  3. 買主が売主に対して契約不適合を担保すべき責任に基づく権利を行使するためには、当該不適合が売主の責めに帰すべき事由により生じたものであることを立証し、かつ、当該不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならない。
  4. 住宅の品質確保の促進等に関する法律では、新築住宅の売主が住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵担保責任を負うべき期間を、特約により、当該物件の引渡日から20年間に伸長することができるとされている。

正解 4

問題難易度
肢111.6%
肢234.8%
肢313.5%
肢440.1%

解説

  1. 不適切。民法が定める契約不適合を担保すべき責任は任意規定ですので、売主と買主の合意により排除する特約を定めることも可能です。ただし、宅地建物の取引において、売主が宅地建物取引業者、買主が宅地建物取引業者以外の場合には宅建業法の規定により排除できないようになっています(宅建業法40条)。
    民法で定める契約不適合を担保すべき責任は強行規定であるため、売主および買主の合意があっても、売主は契約不適合を担保すべき責任を負わないとする特約は無効である。2017.9-36-a
    民法で定める契約不適合を担保すべき責任は任意規定であるため、売主が宅地建物取引業者である場合を除き、売主および買主の合意により売主が契約不適合を担保すべき責任を負わないとする特約は有効である。2014.9-36-2
  2. 不適切。宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者でない者が買主となる取引では、契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を引渡しの日から2年以上とする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利な特約をしてはいけません。本肢は「契約日から」としているので誤りです(宅建業法40条)。
    宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合、その不適合について買主が売主に通知すべき期間を引渡しの日から2年間とする特約を定めたときは、その特約は無効となる。2023.5-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を目的物の引渡しの日から2年間とする旨の特約は有効である。2019.9-36-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者ではない買主と締結する売買契約においては、宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間が売買契約の締結日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2017.9-36-b
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を目的物の引渡しの日から3年間とする旨の特約は有効である。2015.9-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、契約不適合を担保すべき責任については、契約解除等の期間を引渡日より1年以上とする特約以外に、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2014.9-36-3
  3. 不適切。契約不適合を担保すべき責任は原則として無過失責任なので、売主の帰責事由がなくても責任を追及できます。契約に特段の定めがなければ、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知することで、売主の担保責任を追及できます(民法566条)。
    買主が売主である宅地建物取引業者の契約不適合を担保すべき責任を追及するためには、当該不適合が売主の責めに帰すべき事由により生じたものであることを立証し、かつ、当該不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならない。2019.9-36-1
  4. [適切]。住宅の品質確保の促進等に関する法律は、新築住宅の取得契約(請負・売買)において、基本構造部分(柱、梁などの住宅の構造耐力上主要な部分等)の瑕疵担保期間を10年間義務付けるものです(20年まで伸長可能)。本法では、「住宅の隠れた瑕疵について同項に規定する担保の責任を負うべき期間は、注文者又は買主に引き渡した時から20年以内とすることができる」とし、瑕疵担保期間を最長20年まで伸長できる旨を定めています(品質確保法97条)。
    住宅の品質確保の促進等に関する法律により、新築住宅の売買契約においては、売主は、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、原則として、当該物件を買主に引き渡した時から10年間の瑕疵担保責任を負うことになる。2017.9-36-c
    「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、新築住宅の売主は、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、当該物件の引渡日から20年間、瑕疵担保責任を負うことになる。2014.9-36-4
したがって適切な記述は[4]です。