FP1級過去問題 2024年5月学科試験 問17

問17

各種信託商品の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 特定寄附信託は、信託銀行等が寄附に関する契約を締結した公益法人等のなかから寄附先を指定することができる信託であり、特定寄附信託で運用した収益は非課税で、信託元本については寄附金控除の対象となる。
  2. 暦年贈与信託は、あらかじめ委託者と受益者が定期の給付を目的とする贈与契約を締結して設定される信託であり、委託者が拠出する信託財産について、毎年のあらかじめ決められた日に均等額が受益者に給付される。
  3. 後見制度支援信託は、被後見人の生活の安定に資すること等を目的に設定される信託であり、信託契約の締結、信託の変更・解約等の手続があらかじめ家庭裁判所が発行する指示書に基づいて行われ、信託財産は金銭だけでなく有価証券や不動産とすることができる。
  4. 遺言代用信託は、遺言書の保管や遺言の執行を信託銀行等に信託するものであり、委託者の生存中は委託者が第一受益者となり、委託者の死亡後は委託者があらかじめ指定した者が第二受益者となる。

正解 1

問題難易度
肢143.9%
肢212.2%
肢312.6%
肢431.3%

解説

  1. [適切]。特定寄附信託は、信託された金銭とその運用収益を特定の公益法人やNPO法人に寄附することを目的とする信託です。信託した元本は毎年分割する形で寄附され、寄附した額は寄附金控除の対象となります。また、これらの特定公益信託から生じる運用収益は非課税です。
  2. 不適切。暦年贈与信託は、委託者が拠出した信託財産のうち毎年一定額を受益者に給付する信託です。本肢のように、毎年●円を▲年間贈与すると決める定期贈与契約だと、その総額が「定期金に関する権利」として贈与税の課税対象となるので、暦年贈与信託は、贈与を行うたびに贈与契約を締結する形をとります。
  3. 不適切。後見制度支援信託は、法定被後見人の財産保護と生活の安定を目的として、法定被後見人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託するものです(信託財産は金銭に限られる)。委託者=受益者となる自益信託で、交付等の手続きは家庭裁判所が発行する指示書に基づいて行われます。なお、本信託の対象となるのは法定被後見人だけですので、被保佐人、被補助人、任意被後見人は対象外です。
  4. 不適切。遺言代用信託は、委託者から信託された財産の管理・運用により、委託者の生存中は委託者本人が(第一)受益者として給付を受け、委託者の死亡後はあらかじめ指定された人が(第二)受益者となって遺産の分配を受けるものです。信託によって財産の分配を実現する仕組みであり、財産の分配は信託契約に基づいて行われます。遺言書の保管や遺言の執行を委託する制度ではありません。
したがって適切な記述は[1]です。