FP1級過去問題 2025年5月学科試験 問48

問48

相続税の税額控除等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 被相続人の配偶者は、相続の放棄をした場合であっても、遺贈により取得した財産があるときは、「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けることができる。
  2. 未成年者である相続人が相続税額から控除することができる未成年者控除額は、「相続開始時の未成年者の年齢×10万円」の算式により計算した金額となる。
  3. 相続開始前に被相続人から暦年課税による贈与により取得し、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産がある場合、相続税額の計算上、当該財産の取得について課せられた贈与税額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は、税額の還付を受けることができる。
  4. 被相続人がその相続開始前20年以内に相続税を納付していた場合、当該被相続人から相続または遺贈により財産を取得した相続人の相続税額から、当該被相続人が納付した相続税額のうち、一定の割合で逓減した後の金額を控除することができる。

正解 1

問題難易度
肢144.5%
肢26.6%
肢336.7%
肢412.2%

解説

  1. [適切]。配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が相続・遺贈により財産を取得した場合に適用対象となります。相続開始時点で法律上の配偶者であれば、たとえその後に相続を放棄しても適用されます。このため、遺贈で受け取った財産や死亡保険金などの「みなし相続財産」に対しても利用できます。
    法定相続人である未成年者が相続の放棄をした場合、仮にその未成年者が遺贈により財産を取得しているときであっても、未成年者控除の適用を受けることはできない。2014.1-46-2
  2. 不適切。未成年者控除の額は、「(18歳-相続開始時年齢)×10万円」の式で計算します。未成年者控除は、未成年者が自立するまでに要する養育費を相続財産から引くことを趣旨とするため、年齢が上がるほど控除額が少なくなる制度設計となっています。
    未成年者である相続人が、過去に未成年者控除の適用を受けたことがある場合、その者が2回目に受けることができる未成年者控除額は、「(18歳-相続開始時年齢)×10万円」の算式により計算した金額である。2023.5-47-3
  3. 不適切。相続財産を取得した人が、相続開始前7年以内に被相続人から贈与を受けていたときは、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算します。当該贈与財産について贈与税を納付していた場合、その贈与税額はその人の納付相続税額から控除することができます(贈与税額控除)。この暦年課税による贈与税額控除の上限は納付相続税額なので、贈与税額>相続税額となる場合でも税額還付を受けることはできません(相続税法19条)。
    これに対して、相続時精算課税を選択した場合は、贈与時の贈与税額が相続税額よりも上回っていたときは差額の還付を受けることができるという違いがあります。
    相続開始の前年に被相続人から暦年課税による贈与により取得し、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産がある場合、相続税額の計算上、当該財産について課された贈与税額を控除することができるが、相続税額から控除しきれない部分は税額の還付を受けることはできない。2024.5-47-3
    被相続人を特定贈与者とする相続時精算課税の適用を受けた相続人は、相続税額から相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税相当額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2023.5-47-2
    相続開始前7年以内に被相続人から暦年課税による贈与により取得し、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産がある場合、相続税額の計算上、当該財産について課された贈与税額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2019.9-45-1
  4. 不適切。20年ではありません。被相続人が、相続開始前10年以内に相続により財産を取得し、相続税の納付をしていた場合には、先の相続で支払った相続税額のうち一定額が、今回の相続人が支払う相続税額から控除されます。これを「相次相続控除」といい、時期が近い相続において、同一の財産に相続税が複数回課されることを避ける目的があります(相続税法20条)。
    被相続人が自身の相続開始日の5年前に開始した相続に関して相続税を納付していた場合、当該被相続人の相続財産を取得した相続人に係る相続税額から、当該被相続人が納付した相続税額のうち、一定の割合で逓減した後の金額を控除することができる。2024.5-47-4
    被相続人が当該相続の開始前10年以内に開始した相続により財産を取得していたときは、当該被相続人から相続により財産を取得した相続人は、相続税額から当該被相続人が納付した相続税額に所定の割合を乗じて得た金額を控除することができる。2023.5-47-4
    被相続人がその相続開始前20年以内に相続税を納付していた場合、当該被相続人から相続または遺贈により財産を取得した相続人の相続税額から当該被相続人が納付した相続税額の一定割合を控除することができる。2019.9-45-4
    被相続人がその相続開始前15年以内に相続税を納付していた場合、当該被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者の相続税額から当該被相続人が納付した相続税額の一定割合を控除することができる。2016.1-47-4
したがって適切な記述は[1]です。