FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問44

問44

相続に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 相続人が被相続人の兄と妹の2人である相続において、兄は被相続人と父母を同じくするが、妹は被相続人と父母の一方のみを同じくする場合、兄の法定相続分は3分の2となる。
  2. 共同相続人の1人が、遺産の分割前に、その相続分を共同相続人以外の第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は、所定の期間内にその価額および費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
  3. 被相続人に子と孫がおり、子と孫が親子である場合において、孫は、子が被相続人の相続開始前に死亡していたときや相続人の欠格事由に該当したときは代襲相続人となるが、子が相続の放棄をしたときは代襲相続人とならない。
  4. 被相続人の相続開始後、特別寄与者が複数の相続人に対して特別寄与料の支払を請求した場合、各相続人が負担する額は、原則として、特別寄与料の額に各相続人が相続財産を実際に取得した割合を乗じた額となる。

正解 4

問題難易度
肢138.9%
肢218.5%
肢37.3%
肢435.3%

解説

  1. 適切。兄弟姉妹が相続人である場合で、父母の一方のみが同じである兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の2分の1となります(民法900条4号)。
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    兄(全血兄弟姉妹)の相続分を"2"とすると、妹(半血兄弟姉妹)の相続分は"1"となります。相続分は2:1で分割されるため、兄は3分の2、妹は3分の1の法定相続分となります。
  2. 適切。相続人の1人が遺産分割前に相続分を第三者に譲渡した場合、譲渡の時から1カ月以内であれば、他の相続人は対価と費用を支払ってその相続分を取り戻すことができます。これを「相続分の取戻権」といいます(民法905条)。
    【参考】第三者による遺産分割協議への参加や、遺産の共有といった不便を防ぐための規定ですが、ほとんど利用されていません。
  3. 適切。代襲相続は、本来相続人となるべき人が死亡・欠格・廃除により相続できない場合に発生します(民法897条2項)。相続放棄をした場合、最初から相続人とならなかったとみなされるため、代襲相続はありません(民法939条)。
  4. [不適切]。相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料のうち自身の相続分を乗じた額を負担します(民法1050条5項)。仮に被相続人に2人の子がいて、一方の子の配偶者が特別寄与料を請求する場合には、通常、請求は他方の子に対して行われます。その請求された子は、特別寄与料のうち2分の1(=自身の相続分)を支払えば足ります。各相続人の実際に取得した相続財産の割合で各相続人の負担割合が決まるわけではありません。
    特別寄与者が相続人に対して特別寄与料の支払を請求する場合に、相続人が複数いるときは、各相続人が負担する額は、特別寄与料の額に当該相続人の法定相続分または指定相続分を乗じた額となる。2025.1-45-4
    特別寄与者が複数の相続人に対して特別寄与料の支払を請求した場合、各相続人が負担する額は、特別寄与料の額に当該相続人の法定相続分または指定相続分を乗じた額となる。2021.5-45-3
したがって不適切な記述は[4]です。