FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問45
問45
相続の承認および放棄に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
- 被相続人である夫に支給されるべき国民年金の年金給付のうち、まだ支給されていなかったもの(未支給年金)を被相続人の妻が受け取った場合、妻は、原則として、夫の相続について単純承認をしたものとみなされる。
- 契約者(=保険料負担者)および被保険者を父、保険金受取人を子とする生命保険の死亡保険金を子が受け取った場合、子は、原則として、父の相続について単純承認をしたものとみなされる。
- 限定承認をする場合に、共同相続人のうちに相続の放棄をした者がいるときは、その放棄者を除いた全員が共同して家庭裁判所に限定承認をする旨を申述しなければならない。
- 相続人が被相続人の妻と未成年の子の2人のみであって、妻と子が同時に相続の放棄をする場合、妻は、子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
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正解 3
分野
科目:F.相続・事業承継細目:3.相続と法律
解説
- 不適切。未支給年金は、被相続人と同一生計であった一定範囲の親族が、自己の名で請求するものです。この請求権は相続とは別個の遺族固有の権利であり、相続財産には含まれません。したがって、請求しても相続財産の処分には当たらず、単純承認とはみなされません。
- 不適切。相続人が相続財産を処分すると単純承認したことになりますが、死亡保険金については、受け取っても処分しても単純承認にはあたりません。被相続人の死亡により受け取る死亡保険金は、相続税法上はみなし相続財産として課税対象となりますが、私法上は受取人の固有財産であり本来の相続財産ではないためです(民法921条)。共同相続人のなかに被相続人を契約者(=保険料負担者)および被保険者とする生命保険の死亡保険金を受け取った者がいる場合、その死亡保険金は、原則として、特別受益に該当する。(2024.9-44-4)契約者(=保険料負担者)および保険金受取人を相続人、被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。(2024.5-44-1)相続人が、契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人、保険金受取人を当該相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。(2020.9-44-1)
- [適切]。相続の放棄をした者は、当初から相続人ではなかったものとして扱われるので、限定承認は、相続の放棄をした者以外の共同相続人全員が共同して、相続開始から3カ月以内に申述することになります(民法939条)。限定承認は、共同相続人のうちに相続の放棄をした者がいる場合、その放棄者を含めた共同相続人の全員が共同して家庭裁判所にその旨の申述をしなければならない。(2023.5-45-3)限定承認は、共同相続人の全員が共同して家庭裁判所にその旨の申述をしなければならないため、共同相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合、その相続について限定承認をすることはできない。(2018.9-44-1)
- 不適切。特別代理人を選任する必要があるのは、未成年である子と親の利益が相反する場合です。両方が相続放棄するケースでは利益相反は起こらないため、特別代理人の選任は不要です。これに対して、未成年の子だけが相続放棄をする場合や、親子がそろって遺産分割協議に参加する場合には、特別代理人を立てる必要があります(民法826条)。相続人が被相続人の妻と未成年の子の2人のみであって、妻と子が同時に相続の放棄をする場合、子について特別代理人を選任しなければならない。(2024.5-44-4)
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