相続と法律(全46問中2問目)

No.2

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下、「相続土地国庫帰属法」という)における土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認申請に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
2024年1月試験 問46
  1. 承認申請に係る隣接する2筆以上の土地を管轄する法務局が2以上ある場合、そのいずれかに対して当該土地の承認申請をすればよい。
  2. 相続により取得した土地が数人の共有に属する場合、共有者の全員が共同して行うときに限り承認申請をすることができる。
  3. 相続土地国庫帰属法が施行された2023年4月27日前に相続により取得した土地は、承認申請をすることができない。
  4. 建物がある土地は、承認申請をすることができない。

正解 3

問題難易度
肢114.1%
肢215.2%
肢352.1%
肢418.6%

解説

  1. 適切。相続土地国庫帰属法は、相続等で取得した土地を管理上の理由等で手放したい場合に、国庫に帰属させる手続きを定めた法律です。所有者不明土地の発生を抑制することを目的としています(2023年4月27日施行)。
    本制度の申請は、土地の所在地を管轄する法務局に対して行います。申請対象の土地が二筆以上であり管轄法務局が2つ以上ある場合には、そのいずれかに対して提出することで足ります(帰属法規則1条)。
  2. 適切。相続した土地が共有に属するときは、共有者全員が共同して申請する場合に限り、本制度を利用することができます。つまり、単独で土地の共有持分を手放すことはできません。これは、国が一部の共有持分を取得しても、土地の管理や処分に際して他の共有者の同意が必要となり、過分な管理コストが掛かるためです(帰属法2条2項)。
  3. [不適切]。取得した時期は、申請の却下事由、申請の不承認事由のいずれにも該当しないため、本制度開始前に相続した土地についても本制度の対象になります。法務省のウェブサイトでも、数十年前に相続した土地についても本制度の対象となると説明されています。
  4. 適切。本制度により国庫への帰属が決まった土地は、それ以降、国が管理・処分を行うことになります。過度な管理コストが国に転嫁されることを防ぐために、通常と比べて過分に費用や労力を要する以下の土地については本制度を利用することができません(帰属法2条3項)。
    1. 建物がある土地
    2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
    3. 通路等の他人による使用が予定されている土地
    4. 特定有害物質により汚染されている土地
    5. 境界や所有権の帰属について争いがある土地
    建物は、一般に管理コストが土地以上に高額であること、また老朽化すると管理コストがさらに増加し、最終的には建替えや取壊しが必要になるなど、過分な管理コストが掛かることが明らかなので申請の却下事由とされています。
したがって不適切な記述は[3]です。