相続と法律(全46問中3問目)

No.3

養子に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、特別養子縁組以外の縁組による養子を普通養子といい、記載のない事項については考慮しないものとする。
2023年9月試験 問44
  1. 特別養子縁組は、特別養子適格の確認の審判と特別養子縁組の成立の審判により成立するが、特別養子適格の確認の審判の申立ては、児童相談所長が行わなければならず、養親となる者が申立てをすることはできない。
  2. 特別養子の養親は、配偶者を有する者で、夫婦の一方が満25歳以上、かつ、夫婦のもう一方は満20歳以上でなければならないが、普通養子の養親は、満20歳以上であれば配偶者がいない者でもなることができる。
  3. 普通養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、養親に対する相続権を有するとともに、実親との親族関係も継続するため、実親に対する相続権も有する。
  4. 子を有する者を普通養子とした後、その普通養子が死亡した場合において、普通養子の死亡後に養親の相続が開始したときは、普通養子の子は、普通養子の相続権を代襲しない。

正解 1

問題難易度
肢153.0%
肢216.1%
肢36.8%
肢424.1%

解説

  1. [不適切]。特別養子縁組は、養親となるべき者が家庭裁判所に対して「特別養子適格の確認の審判」「特別養子縁組の成立の審判」を同時に申し立てることにより行われます。家庭裁判所は、確認の審判で法定の要件を満たすことを確認したうえで、成立の審判を行います。また、児童相談所長も「特別養子適格の確認の審判」を申し立てることができ、この審判を受けた者は6か月以内に「特別養子縁組の成立の審判」を申し立てることができます(家事事件手続法164条・165条)。
  2. 適切。特別養子では夫婦そろって養子縁組をする必要があります。特別養子の養親の年齢は25歳以上とされていますが、夫婦の一方が25歳以上であれば、夫婦のもう一方は20歳以上であれば養親になることができます(民法817条の4)。一方、普通養子では、20歳に達していれば配偶者を有していない者でも養親となることができます(民法792条)。
  3. 適切。普通養子は実親との親子関係を保持したまま、養親との法律上の親子関係を作る制度です(民法809条)。普通養子となった者は実親・養親の両方の相続権を有することとなります。一方、特別養子では実親との親族関係は終了します。
    普通養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、養親に対する相続権を有するとともに、実親との親族関係も継続するため、実親に対する相続権も有する。2021.5-43-4
    普通養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子としての身分を取得し、養親に対する相続権を有するとともに、実親との親族関係も継続するため、実親に対する相続権も有する。2018.9-43-3
    普通養子は、養子縁組の成立により養親の嫡出子としての身分を取得し、それによって実方の父母との親族関係が終了する。2016.9-43-3
  4. 適切。養子縁組を行うと養子と養親の親族の間に親族関係が発生しますが、養親と養子の実親族の間には親族関係は生じません(民法727条)。このため、養親と養子縁組に生まれた養子の子との間には何ら法定血族関係はなく、養子縁組に生まれた養子の子は被相続人の直系卑属ではありません。よって、代襲相続は生じません。
    なお、養子は養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得するので、養子縁組のに生まれた養子の子は、養親の直系卑属とみなされるという違いがあります。
    養親の相続開始前に普通養子が死亡した場合、養親の相続において、その養子縁組後に生まれた普通養子の子は、普通養子の相続権を代襲する。2022.1-45-2
    子を有する者を普通養子とした後、養親の相続開始前にその普通養子が死亡した場合、養親の相続において、普通養子の子は、普通養子の相続権を代襲しない。2018.9-43-4
したがって不適切な記述は[1]です。