相続と税金(全56問中5問目)

No.5

相続税の税額控除に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2023年5月試験 問47
  1. 在外財産に対する相続税額の控除(外国税額控除)による控除額は、外国の法令により課された相続税に相当する税額を、原則として、その納付すべき日における対顧客直物電信売相場(TTS)により邦貨に換算した金額となる。
  2. 被相続人を特定贈与者とする相続時精算課税の適用を受けた相続人は、相続税額から相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税相当額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。
  3. 未成年者である相続人が、過去に未成年者控除の適用を受けたことがある場合、その者が2回目に受けることができる未成年者控除額は、「(18歳-相続開始時年齢)×10万円」の算式により計算した金額である。
  4. 被相続人が当該相続の開始前10年以内に開始した相続により財産を取得していたときは、当該被相続人から相続により財産を取得した相続人は、相続税額から当該被相続人が納付した相続税額に所定の割合を乗じて得た金額を控除することができる。

正解 3

問題難易度
肢135.4%
肢216.0%
肢336.6%
肢412.0%

解説

  1. 適切。相続や遺贈により取得した在外財産に対して、外国において相続税に相当する税を支払った場合、その税額は外国税額控除として日本の相続税額から控除することができます。外貨で納めた税額を円貨に換算するレートには対顧客直物電信相場(TTS)を使います(相基通20の2-1)。外貨で税を納付するために、円を外貨に変えたと考えるからです。
  2. 適切。相続時精算課税制度では、特別控除限度額2,500万円を超えた贈与については一律20%で贈与税が課税されます。この贈与税額は、相続税の計算時に納付税額から控除することができ、納付税額から控除しきれない場合には、税額の還付を受けることができます(相続税法21条の15)。暦年課税による贈与税額では控除できる金額は相続税額が限度となり、税額還付を受けることはできないという違いに注意しましょう。
    被相続人から生前に贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受けていた相続人は、その相続税額から相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税相当額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2020.9-48-4
    相続開始前3年以内に被相続人から暦年課税による贈与により取得し、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産がある場合、相続税額の計算上、当該財産について課された贈与税額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2019.9-45-1
    被相続人から生前に贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受けていた相続人は、その相続税額から相続時精算課税の適用を受けた財産に係る贈与税相当額を控除することができ、相続税額から控除しきれない場合は税額の還付を受けることができる。2016.1-47-2
  3. [不適切]。未成年者控除を複数回にわたり適用を受ける場合、2回目以降の控除額には制限があります。例えば1回目に80万円の控除枠があり、そのうち50万円について税額控除を受けたとすると、2回目は前回の残り枠である「80万円-50万円=30万円」と、「(18歳-相続開始時年齢)×10万円」の式による額のいずれか低いほうが限度となります(相続税法19条の3)。
  4. 適切。被相続人が、相続開始前10年以内に相続により財産を取得し、相続税の納付をしていた場合には、先の相続で支払った相続税額のうち一定額が、今回の相続人が支払う相続税額から控除されます。これを「相次相続控除」といい、時期が近い相続において、同一の財産に相続税が複数回課されることを避ける目的があります(相続税法20条)。
    被相続人がその相続開始前20年以内に相続税を納付していた場合、当該被相続人から相続または遺贈により財産を取得した相続人の相続税額から当該被相続人が納付した相続税額の一定割合を控除することができる。2019.9-45-4
    被相続人がその相続開始前15年以内に相続税を納付していた場合、当該被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者の相続税額から当該被相続人が納付した相続税額の一定割合を控除することができる。2016.1-47-4
したがって不適切な記述は[3]です。