相続と税金(全56問中4問目)

No.4

相続税の延納および物納に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
2023年9月試験 問47
  1. 相続財産のうち不動産等の価額が占める割合が50%以上であり、延納税額が90万円ある場合、延納税額の延納期間は、最長9年となる。
  2. 延納の担保は、相続または遺贈により取得した財産に限られず、相続人の固有の財産や共同相続人または第三者が所有している財産であっても担保に提供することができる。
  3. 相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により物納に変更する場合、当該物納に係る財産の収納価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となった当該財産の価額となる。
  4. 共有物である不動産は、共有者全員が物納の許可の申請をする場合、物納に充てることができる。

正解 3

問題難易度
肢125.8%
肢218.0%
肢342.7%
肢413.5%

解説

  1. 適切。延納税額が50万円(相続財産のうち不動産等の価額が占める割合が50%以上のときは150万円)未満であるときは、延納の年数は「延納税額÷10万円(端数切上げ)」が上限となります。本肢は、不動産50%以上で150万円未満ですから、延納期間の上限は「90万円÷10万円=9年」となります(相続税法38条1項)。
    相続財産のうち不動産等の価額が占める割合が50%未満であり、延納税額が35万円である場合、延納税額の延納期間は、最長4年となる。2019.9-46-2
    相続財産のうち不動産等の価額が占める割合が75%以上である場合、不動産等の価額に対応する部分の延納税額の延納期間は、原則として、最長で30年である。2015.9-48-1
    相続財産のうち不動産等の価額が占める割合が50%以上75%未満である場合、不動産等の価額に対応する部分の延納税額の延納期間は、原則として、最高10年である。2014.1-45-2
  2. 適切。担保を提供するのは、相続・遺贈により取得した財産に限られません。延納税額が100万円超または延納期間が3年超である場合、延納税額とその利子税の額に相当する担保を提供しなければなりませんが、担保は不適格財産に該当しなければ相続人の財産から提供することも可能です(相続税法38条5項)。
  3. [不適切]。相続税の課税価格ではありません。延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について延納から物納への変更を行うことができます。これを「特定物納」といいます。特定物納に係る財産の収納価額は、物納申請時の時価となります(相続税法48条の2第5項)。
    相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により物納に変更する場合、当該物納に係る財産の収納価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となった当該財産の価額となる。2019.9-46-4
    相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により物納に変更する場合において、相続税額の計算上、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けている財産は、物納に充てることができない。2018.9-46-4
    延納を選択した者が物納に変更した場合、当該物納に係る特定物納申請財産の収納価額は、原則として相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額である。2015.1-47-4
    相続税の納付方法として延納を選択した者が物納に変更した場合、当該物納に係る特定物納申請財産の収納価額は、相続税の課税価格の計算の基礎となった相続財産の価額ではなく、原則として、当該特定物納に係る申請の時の価額となる。2014.1-45-4
  4. 適切。2人以上の者に共有されている不動産は、管理処分不適格財産に該当するので、原則として物納に充てることができません。ただし、①共有者全員が物納の申請をする場合、②私道の土地、については例外的に物納に充てることができます(相続税法規則21条5項)。
したがって不適切な記述は[3]です。