FP1級過去問題 2017年1月学科試験 問35

問35

借地借家法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問における普通借地権とは、定期借地権等以外の借地権をいう。
  1. 普通借地権の存続期間が満了し、借地契約を更新する場合において、当事者間の合意により更新後の期間を30年と定めることは可能である。
  2. 普通借地権の存続期間が満了し、借地契約を更新しない場合において、借地人は、土地所有者に対し、借地人が権原により借地上に建築した建物について時価で買い取るべきことを請求することができる。
  3. 居住の用に供する賃貸マンションの事業運営を目的とし、かつ、存続期間を20年として定期借地権を設定することはできない。
  4. 建物の譲渡により建物譲渡特約付借地権が消滅した場合、当該建物の賃借人は、土地所有者の承諾を得なければ当該建物の使用を継続することができない。

正解 4

問題難易度
肢110.4%
肢29.7%
肢327.9%
肢452.0%

解説

  1. 適切。普通借地権の存続期間は次のようになっています。
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    1回目の更新は20年以上、2回目以降の更新は10年以上ですから、いずれの場合でも存続期間30年とすることは可能です(借地借家法4条)。
    普通借地権の存続期間が満了し、普通借地契約を更新する場合において、当事者間の合意により更新後の期間を50年と定めることは可能である。2019.9-37-1
    普通借地権の存続期間が満了し、借地契約を更新しない場合において、借地人は、土地所有者に対し、借地人が権原により借地上に建築した建物について時価で買い取るべきことを請求することができる。2017.1-35-2
  2. 適切。普通借地権で、借地権の存続期間が満了して契約更新がない場合には、借地人は、土地所有者に対し、建物及び土地に付随された物を時価で買い取るように請求できます。これを「建物買取請求権」といいます(借地借家法13条)。
    普通借地権の存続期間が満了し、普通借地契約を更新する場合において、当事者間の合意により更新後の期間を50年と定めることは可能である。2019.9-37-1
    普通借地権の存続期間が満了し、借地契約を更新する場合において、当事者間の合意により更新後の期間を30年と定めることは可能である。2017.1-35-1
  3. 適切。賃貸事業を目的としていますが、居住用建物なので事業用定期借地権等を設定することはできません。そうなると一般定期借地権(50年以上)、または建物譲渡特約付借地権(30年以上)となりますから、存続期間20年の定期借地権を設定することはできません。
    居住の用に供する賃貸マンションの事業運営を目的とし、かつ、存続期間を20年として定期借地権を設定することはできない。2019.9-37-3
    事業用定期借地権等においては、居住の用に供する賃貸マンションの事業運営を目的とする設定契約を締結することができない。2015.1-36-4
  4. [不適切]。建物譲渡特約付借地権は、契約で決められた時期に借地上の建物の買取りが行われることにより消滅します。建物の所有権は土地の所有者に移転しますが、借地権者だった人がその後も継続して当該建物を使用したいときには、土地所有者に請求すれば期間の定めのない普通建物賃貸借がされたとみなされます(借地借家法24条2条)。土地所有者の承諾は必要ありません。ただし、土地所有者との間で定期借家契約がされたときはそちらが優先されます。
    土地所有者に対する建物の譲渡により建物譲渡特約付借地権が消滅した場合において、当該建物の賃借人は、土地所有者の承諾を得られなければ、その消滅後に当該建物の使用を継続することはできない。2021.1-36-4
    建物の譲渡により建物譲渡特約付借地権が消滅した場合において、その建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものと借地権設定者との間で、その建物について定期建物賃貸借契約を締結することは可能である。2019.9-37-4
したがって不適切な記述は[4]です。