FP1級過去問題 2023年5月学科試験 問44

問44

相続時精算課税制度に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税は適用されない。
  2. 相続時精算課税の特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者が死亡し、特定贈与者がその相続時精算課税適用者の相続人である場合、当該特定贈与者は相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利または義務を承継しない。
  3. 受贈者が贈与者から贈与を受けた後、同一年中において受贈者が贈与者の養子となり相続時精算課税の適用を受ける場合、養子となる前の贈与者からの贈与財産は相続時精算課税の適用を受けることができる。
  4. 相続時精算課税の特定贈与者が死亡し、相続時精算課税適用者がその相続または遺贈により財産を取得しなかった場合、相続税額の計算上、その被相続人から相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格に含める必要はない。

正解 2

問題難易度
肢17.2%
肢262.2%
肢318.6%
肢412.0%

解説

  1. 不適切。養子縁組の解消等により特定贈与者の推定相続人でなくなった場合でも、その特定贈与者からの贈与により取得した財産については、引き続き相続時精算課税が適用されます(相続税法21条の9)。
    養親から相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた養子が、当該養親との養子縁組解消後に養親であった者からの贈与により取得した財産については、引き続き相続時精算課税制度が適用される。2024.9-43-4
    養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその者からの贈与により取得した財産については、暦年課税が適用される。2021.9-43-4
    養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税は適用されない。2020.9-43-1
    養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合においても、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税が適用される。2017.9-43-2
    相続時精算課税制度の適用を受けていた者が、養子縁組の解消により、特定贈与者の推定相続人でなくなった場合は、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税制度の適用を受けることができない。2014.9-43-4
  2. [適切]。特定贈与者の死亡以前に相続時精算課税適用者(受贈者のこと)が死亡した場合には、その者の相続人が相続時精算課税に関する権利義務を承継するのが原則ですが、相続人の中に特定贈与者がいる場合、その特定贈与者は権利義務を承継しません。自分が死んだときの精算処理を自分ですることになってしまうからです(相続税法21条の17)。
  3. 不適切。相続時精算課税制度に係る受贈者は、①贈与時点において特定贈与者の直系卑属である推定相続人、②贈与を受けた年の1月1日において18歳以上、の2つの要件をともに満たす者です。養子となり年の途中に適用者の条件を満たした場合には、その満たした日以後に受けた贈与についてのみ相続時精算課税制度の適用を受けることができます。養子となる前の贈与者からの贈与財産は、相続時精算課税制度の適用を受けることはできません(相続税法21条の9)。
  4. 不適切。相続時精算課税の適用を受けた贈与された財産は、その者が相続・遺贈で財産を取得しなかった場合でも、贈与時の価額から基礎控除額を控除した残額を相続税の課税価格に加算する必要があります。相続時精算課税制度は、贈与による課税関係を相続時に精算する制度であるため、相続財産を取得するかどうかにかかわらず、相続税の課税対象とする仕組みになっています(相続税法21条の15)。
したがって適切な記述は[2]です。