FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問42

問42

贈与税の課税財産等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 子が父から著しく低い価額の対価で土地を譲り受けた場合、原則として、子が、その相続税評価額と支払った対価の額との差額を、父から贈与により取得したものとみなされる。
  2. 兄・弟・妹の3人で購入し、共有している土地について、兄がその持分を放棄した場合、その持分は弟・妹に帰属し、兄に係る持分を弟・妹が各自の持分に応じて贈与により取得したものとみなされる。
  3. 元夫が所有する居住用マンションを元妻に財産分与した場合、原則として、元妻が取得した当該マンションは、贈与により取得したものとされない。
  4. 債務者である子が資力を喪失して債務を弁済することが困難となり、父が当該債務を弁済した場合、弁済された金額のうち債務を弁済することが困難である部分の金額は、贈与により取得したものとされない。

正解 1

解説

  1. [不適切]。相続税評価額ではありません。個人から著しく低い価額の対価で譲り受けた場合、その財産の時価と支払った対価の額との差額に相当する金額が贈与によって取得したものとみなされます(相続税法7条)。
    ただし、譲り受ける者が資力を喪失して債務弁済が困難であるときに、扶養義務者から債務弁済のために行われる贈与(債務弁済が困難な部分に限る)を除きます。
    子Dさんが、父Eさんから土地を著しく低い価額の対価で譲り受けた場合、子Dさんが資力を喪失して債務を弁済することが困難な状態にあるときを除き、当該土地の相続税評価額と支払った対価の額との差額に相当する金額を父Eさんから贈与により取得したものとみなされる。2019.1-42-2
  2. 適切。共有物について共有者の1人がその持分を放棄した場合、放棄された持分は他の共有者の持分に帰属します(民法255条)。放棄された持分を取得した共有者は、その持分を贈与により取得したものとみなされます(相基通9-12)。
    兄・弟・妹の3人が共有している土地について、兄がその持分を放棄した場合、その持分は弟・妹に帰属し、兄に係る持分を弟・妹が各自の持分に応じて贈与により取得したものとみなされる。2022.1-42-4
    3人が共有している財産について、そのうちの1人がその持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属し、放棄した者に係る持分を他の共有者が各自の持分に応じて贈与により取得したものとみなされる。2019.1-42-3
  3. 適切。離婚による財産分与によって取得した財産については、夫婦の協力によって得た財産の額等を考慮して社会通念上相当な範囲内である場合は、贈与による取得とはみなされず、贈与税の課税対象となりません。ただし、その範囲を超える額や、税金逃れのための離婚と認められる場合はこの限りではありません(相基通9-8)。
    元夫が所有するマンションを元妻に財産分与した場合、元夫の譲渡所得の金額の計算上、当該マンションの財産分与の価額が収入金額となる。2025.1-42-2
    離婚により、夫が妻に居住用マンションを財産分与した場合、原則として、妻が取得した当該マンションは贈与により取得したものとされない。2023.5-43-4
  4. 適切。債務について免除・引受け・第三者弁済された額は、贈与による取得とみなされて贈与税の課税対象となるのが原則です。ただし、資力を喪失して債務を弁済することが困難である者が、①債務の免除、②扶養義務者による債務の引受け・弁済をがあった場合、取得とみなされた額のうち弁済が困難な部分の金額は、贈与税の課税対象とされません(相続税法8条)。
    本肢の事例は、弁済が困難になった子の債務を扶養義務者である父が肩代わりしているため、②に該当し、贈与による取得とはみなされません。
    債務者である子が資力を喪失して債務を弁済することが困難となり、子の父が当該債務を弁済した場合、弁済された金額は父からの贈与により取得したものとみなされるが、そのうち債務を弁済することが困難である部分の金額は、贈与により取得したものとされない。2023.5-43-3
したがって不適切な記述は[1]です。