FP1級過去問題 2024年5月学科試験 問33

問33

会社とその役員の間の取引等における法人税および所得税の取扱いに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 役員が所有する取引先A社の株式(取得価額1,200万円、時価1,800万円)を、1,400万円で会社が買い取った場合、会社側では400万円の受贈益が発生し、役員側では、1,400万円が譲渡所得の収入金額として課税対象となる。
  2. 役員が所有する土地を適正な時価の2分の1未満の価額で会社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。
  3. 役員が所有する土地を会社に建物の所有を目的として賃貸する場合、会社から役員に権利金の支払がないときは、会社側では借地権相当額が受贈益として益金算入となり、役員側では借地権相当額が譲渡所得の収入金額として課税対象となる。
  4. 役員が会社に無利息で金銭を貸し付けた場合、役員側では通常支払われるべき利息が雑所得の収入金額として課税対象となる。

正解 1

問題難易度
肢145.7%
肢224.4%
肢321.8%
肢48.1%

解説

  1. [適切]。法人が他の者と取引を行う場合、すべての資産は時価で取引したとされます。本肢では、時価よりも低額で買い取っている会社が得をしているため、法人側では、時価と譲渡価額との差額である400万円を受贈益として益金に算入します。役員側は、時価の2分の1以上での譲渡なので、譲渡収入1,400万円が譲渡課税の対象となります。
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  2. 不適切。役員所有の資産が法人に対して時価より低額で譲渡された場合、法人が得をすることになります。法人側は時価で取得したとされるため、時価と譲渡価額との差は受贈益として益金に算入します。役員側の税務は、譲渡価額が時価の2分の1以上か未満かによって次のように異なります。
    時価の2分の1以上で譲渡
    譲渡価額が譲渡収入となる
    時価の2分の1未満で譲渡
    譲渡価額と時価の差額はみなし譲渡所得とされ、時価が譲渡収入となる
    ※譲渡価額+みなし譲渡所得=時価
    本肢は2分の1未満なので、時価を譲渡収入の金額として譲渡課税が行われます。役員側が損をする立場なので給与収入とはなりません。
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2021.9-33-1
    役員が所有する資産を適正な時価よりも高い価額でX社に譲渡した場合、X社側では時価と買入価額との差額について、役員に対して給与を支払ったものとして取り扱われ、役員側では時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2021.9-33-2
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2020.9-33-1
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2019.5-33-1
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2019.5-33-2
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとみなされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得の収入金額として課税対象となる。2018.1-33-2
    X社が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で役員に譲渡した場合、X社側では時価で譲渡したものとされ、譲渡価額と時価との差額が受贈益として益金算入となる。2016.1-33-1
    役員が所有する資産を適正な時価の2分の1未満の価額でX社に譲渡した場合、役員側では時価で譲渡したものとされ、時価と譲渡価額との差額が給与所得として課税される。2016.1-33-2
    役員が所有する資産を適正な時価の3分の2の価額で法人に譲渡した場合、法人側では時価と買入価額との差額が受贈益として取り扱われ、役員側では譲渡価額と取得費等の差額が譲渡所得として課税される。2014.1-32-3
    役員が所有する資産を適正な時価よりも高い価額で法人に譲渡した場合、法人側では時価と買入価額との差額について、役員に対して給与を支払ったものとして取り扱われ、役員側では時価と譲渡価額との差額が給与所得として課税される。2014.1-32-4
  3. 不適切。法人が他の者と行う土地の賃貸借で、借地権の認定課税を避けるには3つの方法があります。
    1. 権利金を支払う
    2. 相当の地代(地価の6%/年)を支払う
    3. 「土地の無償返還に関する届出書」を提出する
    上記のどれも行わずに土地の使用貸借/賃貸借を設定すると、借りた側が権利金相当額をタダでもらったとみなされ、権利金の認定課税が行われます。このとき、法人側(借地人)では権利金相当額が受贈益となりますが、役員側(地主)の課税はありません。
    役員が所有する土地をX社に建物の所有を目的として賃貸する場合に、X社から役員に権利金の支払がないときは、原則として、X社側では借地権相当額が受贈益として益金算入となり、役員側では借地権相当額が譲渡所得の収入金額として課税対象となる。2018.1-33-4
  4. 不適切。役員が法人に対して無利息で金銭を貸し付けた場合、役員と法人の間に課税関係は生じません。役員側は、何ら経済的利益が生じたわけではないため所得税の課税対象とはなりません。法人側では、役員借入金として負債計上します。
    X社が役員から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、役員側では通常支払われるべき利息が雑所得の収入金額として課税対象となる。2020.9-33-3
    役員がX社から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、X社側では通常収受すべき利息が益金算入となり、役員側では通常支払うべき利息が給与所得の収入金額として課税対象となる。2019.5-33-3
    X社が役員から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、役員側では通常支払われるべき利息が雑所得の収入金額として課税対象となる。2018.1-33-3
    役員がX社から無利息で金銭を借り入れた場合、原則として、X社側では通常収受すべき利息が益金算入となり、役員側では通常支払うべき利息が給与所得として課税される。2016.1-33-4
    役員が法人に対して無利息で金銭の貸付を行った場合、原則として、役員側では受取利息の認定が行われ、通常収受すべき利息の額が雑所得として課税される。2014.1-32-1
したがって適切な記述は[1]です。