FP1級過去問題 2024年5月学科試験 問44
問44
相続の承認と放棄に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。- 契約者(=保険料負担者)および保険金受取人を相続人、被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。
- 相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合、他の相続人は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続の放棄をした相続人を除いた全員が共同して申述することにより、相続について限定承認をすることができる。
- 相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合、その者に子があるときは、その子が相続の放棄をした者に代わって相続人となり、その者に子がないときは、相続の放棄をした者が受けるべきであった法定相続分はその者以外の相続人に均等に分配される。
- 相続人が被相続人の妻と未成年の子の2人のみであって、妻と子が同時に相続の放棄をする場合、子について特別代理人を選任しなければならない。
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正解 2
問題難易度
肢19.9%
肢271.2%
肢33.6%
肢415.3%
肢271.2%
肢33.6%
肢415.3%
分野
科目:F.相続・事業承継細目:3.相続と法律
解説
- 不適切。相続人が相続財産を処分すると単純承認したとみなされますが、死亡保険金を受け取ったとしても、その後処分したとしても単純承認したことにはなりません。被相続人の死亡により受け取る死亡保険金は、相続税法上はみなし相続財産として課税対象となりますが、私法上は受取人の固有財産であり本来の相続財産ではないためです(民法921条)。共同相続人のなかに被相続人を契約者(=保険料負担者)および被保険者とする生命保険の死亡保険金を受け取った者がいる場合、その死亡保険金は、原則として、特別受益に該当する。(2024.9-44-4)共同相続人のなかに被相続人を被保険者とする生命保険の死亡保険金受取人がいる場合、原則として、当該死亡保険金は特別受益に該当する。(2023.5-46-2)相続人が、契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人、保険金受取人を当該相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。(2020.9-44-1)契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金受取人となっている者が相続の放棄をした場合、その者が受け取る当該保険金については、相続税額の計算上、死亡保険金の非課税金額の規定は適用されない。(2015.9-46-4)
- [適切]。相続の放棄をした者は、当初から相続人とならなかったものとして扱われるので、相続開始から3カ月以内に、残りの共同相続人全員が共同して申述することによって限定承認をすることができます(民法939条)。相続人が、相続について単純承認したものとみなされた場合であっても、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、相続の放棄をすることができる。(2020.9-44-2)共同相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合であっても、他の相続人は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、全員が共同して申述することにより、相続について限定承認をすることができる。(2020.9-44-3)相続の放棄の効力がいったん生じた場合であっても、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、その放棄を撤回することができる。(2015.9-46-2)
- 不適切。相続の放棄があった場合、その子への代襲相続はありません。代襲相続が生じるのは死亡・欠格・廃除のいずれかの原因で相続権がないときです(民法887条)。相続人が相続の放棄をした場合、その者に子があるときは、その子が相続の放棄をした者に代わって相続人となり、その者に子がないときは、相続の放棄をした者が受けるべきであった法定相続分はその者以外の相続人に均等に分配される。(2015.9-46-3)
- 不適切。特別代理人を選任する必要があるのは、未成年である子と親の利益が相反する場合です。両方が相続放棄するケースでは利益相反は起こらないため、特別代理人の選任は不要です。逆に特別代理人を立てる必要があるのは、未成年の子のみが相続を放棄したり、親と未成年の子の両方が遺産分割協議に参加したりする場合などです(民法826条)。
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