FP1級過去問題 2020年9月学科試験 問44
問44
相続の承認と放棄に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。- 相続人が、契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人、保険金受取人を当該相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。
- 相続人が、相続について単純承認したものとみなされた場合であっても、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、相続の放棄をすることができる。
- 共同相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合であっても、他の相続人は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、全員が共同して申述することにより、相続について限定承認をすることができる。
- 被相続人の負債額が不明であったために限定承認をした後、被相続人に2,000万円の資産と1,500万円の負債があることが判明した場合には、1,500万円の資産と1,500万円の負債が相続人に承継されることになる。
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正解 3
問題難易度
肢110.9%
肢214.5%
肢368.6%
肢46.0%
肢214.5%
肢368.6%
肢46.0%
分野
科目:F.相続・事業承継細目:3.相続と法律
解説
- 不適切。相続人が相続財産を処分すると単純承認したとみなされますが、死亡保険金を受け取ったとしても、その後処分したとしても単純承認したことにはなりません。被相続人の死亡により受け取る死亡保険金は、相続税法上はみなし相続財産として課税対象となりますが、私法上は受取人の固有財産であり本来の相続財産ではないためです(民法921条)。共同相続人のなかに被相続人を契約者(=保険料負担者)および被保険者とする生命保険の死亡保険金を受け取った者がいる場合、その死亡保険金は、原則として、特別受益に該当する。(2024.9-44-4)契約者(=保険料負担者)および保険金受取人を相続人、被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。(2024.5-44-1)共同相続人のなかに被相続人を被保険者とする生命保険の死亡保険金受取人がいる場合、原則として、当該死亡保険金は特別受益に該当する。(2023.5-46-2)契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金受取人となっている者が相続の放棄をした場合、その者が受け取る当該保険金については、相続税額の計算上、死亡保険金の非課税金額の規定は適用されない。(2015.9-46-4)
- 不適切。相続財産の全部または一部を処分したなどの場合には単純承認をしたものとみなされます(民法921条)。一度承認した後は3カ月以内であっても撤回することができません。よって、単純承認の事実を撤回して相続の放棄をすることはできません(民法919条1項)。相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合、他の相続人は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続の放棄をした相続人を除いた全員が共同して申述することにより、相続について限定承認をすることができる。(2024.5-44-2)共同相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合であっても、他の相続人は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、全員が共同して申述することにより、相続について限定承認をすることができる。(2020.9-44-3)相続の放棄の効力がいったん生じた場合であっても、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、その放棄を撤回することができる。(2015.9-46-2)
- [適切]。相続の放棄をした者は、当初から相続人とならなかったものとして扱われるので、相続開始から3カ月以内に、残りの共同相続人全員が共同して申述することによって限定承認をすることができます(民法939条)。相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合、他の相続人は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続の放棄をした相続人を除いた全員が共同して申述することにより、相続について限定承認をすることができる。(2024.5-44-2)相続人が、相続について単純承認したものとみなされた場合であっても、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、相続の放棄をすることができる。(2020.9-44-2)相続の放棄の効力がいったん生じた場合であっても、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内であれば、その放棄を撤回することができる。(2015.9-46-2)
- 不適切。限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を承継する方法です(民法922条)。限定承認を選択すると、申述時の相続財産目録に基づいて相続財産から債務の弁済が行われ、弁済後に残った残余財産のみが相続人に承継されます。
本肢のケースだと、1,500万円の負債を弁済した後に残る500万円が共同相続人に承継されることとなります。被相続人の負債額が不明であったために限定承認をした後、被相続人に2,000万円の資産と1,500万円の負債があることが判明した場合には、1,500万円の資産と1,500万円の負債が相続人に承継されることになる。(2018.9-44-3)被相続人の負債額が不明であったために限定承認をした後、被相続人に1,500万円の資産と1,200万円の負債があることが判明した場合には、1,200万円の資産と1,200万円の負債が相続人に承継されることになる。(2015.10-45-3)
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