FP1級過去問題 2024年9月学科試験 問44

問44

民法における特別受益に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 相続人ではない被相続人の孫が、被相続人から現金の遺贈を受けた場合、その現金は、原則として、特別受益に該当する。
  2. 婚姻期間が20年以上の夫婦において、夫が妻に対し、その居住用建物とその敷地を遺贈した場合、夫は、その遺贈について特別受益の持戻し免除の意思表示をしたものと推定される。
  3. 特別受益に該当する贈与の価額のうち、遺留分を算定するための財産の価額に加算されるのは、原則として、被相続人の相続開始前5年間に行われた贈与によるものに限られる。
  4. 共同相続人のなかに被相続人を契約者(=保険料負担者)および被保険者とする生命保険の死亡保険金を受け取った者がいる場合、その死亡保険金は、原則として、特別受益に該当する。

正解 2

問題難易度
肢111.2%
肢272.3%
肢36.4%
肢410.1%

解説

  1. 不適切。特別受益の対象となるのは、被相続人から相続人に対してなされた、遺贈または婚姻・養子縁組・生計の資本のための生前贈与です。特別受益は、共同相続人間の相続分が公平になるように調整する制度なので、相続人でない者が受けた遺贈は、特別受益には該当しません(民法903条1項)。
  2. [適切]。婚姻期間20年以上の配偶者に対して居住用財産の遺贈・贈与をした場合、被相続人は、この遺贈・贈与に対して特別受益の持戻しの規定を適用しない意思表示をしたものと推定されます(民法903条4項)。特別受益の対象外とすることで、配偶者の相続分を確保する目的があります。
    夫が妻に対し、夫婦で居住の用に供している不動産を贈与した場合に、当該夫婦の婚姻期間が10年以上であるときは、夫は、その贈与について特別受益の持戻し免除の意思を表示したものと推定される。2025.5-45-c
    婚姻期間が20年以上の夫婦において、夫が妻に対し、その居住用建物とその敷地を遺贈した場合、夫は、その遺贈について特別受益の持戻し免除の意思表示をしたものと推定される。2023.5-46-4
  3. 不適切。5年ではありません。遺留分の算定基礎財産に加算される贈与は、原則として相続開始前1年以内にしたものに限られます。ただし、相続人が受けた特別受益に該当する贈与に関しては相続開始前10年以内に行われたものまで加算対象となります(民法1044条)。
    遺留分を算定するための財産の価額に算入される贈与財産の範囲は、原則として、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産に限られる。2025.1-44-2
    遺留分を算定するための財産の価額に算入される贈与の範囲は、原則として、相続開始前7年以内に被相続人から贈与を受けた財産(非課税財産を除く)に限られる。2021.9-45-3
    特別受益とは、原則として、相続人が被相続人から婚姻、養子縁組のため、または生計の資本として相続開始前10年以内に贈与を受けた財産とされている。2017.1-43-1
  4. 不適切。相続人が取得する生命保険金や死亡退職金は、相続人の固有財産であるため、原則として特別受益に該当しません。ただし、共同相続人間の不公平の程度が著しいなどの特別の事情がある場合には、類推適用により特別受益に該当することもあります(最判平16.10.29)。
    契約者(=保険料負担者)および被保険者を父、保険金受取人を子とする生命保険の死亡保険金を子が受け取った場合、子は、原則として、父の相続について単純承認をしたものとみなされる。2025.9-45-2
    契約者(=保険料負担者)および保険金受取人を相続人、被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。2024.5-44-1
    相続人が、契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人、保険金受取人を当該相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取った場合、その金額の多寡や使途にかかわらず、当該相続人は相続について単純承認したものとみなされる。2020.9-44-1
したがって適切な記述は[2]です。