FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問14

問14

自動車損害賠償責任保険(以下、「自賠責保険」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 交通事故の加害者が契約している自賠責保険の保険会社と任意の自動車保険の保険会社が異なる場合、被害者は、任意の自動車保険の保険会社に請求することにより、自賠責保険の保険金を含めて保険金が支払われる一括払制度を利用することができる。
  2. 交通事故の被害者および加害者は、加害者が契約している自賠責保険の保険会社に治療費などの当座の費用として仮渡金の支払を請求することができ、その金額は、被害者の傷害の程度に応じて5万円、20万円、40万円である。
  3. 自賠責保険の保険金の支払において、交通事故の被害者に重大な過失があり、被害者の過失割合が7割以上となる場合、原則として、損害額が保険金額に満たないときは損害額から、保険金額以上となるときは保険金額から、所定の割合による減額が行われる。
  4. 自賠責保険では、複数台の自動車による事故において、共同不法行為により他人の身体に損害を与えた場合、加害者それぞれの自賠責保険に係る保険金額を合算した金額が保険金の支払限度額になる。

正解 2

問題難易度
肢113.1%
肢247.5%
肢319.9%
肢419.5%

解説

  1. 適切。自賠責保険の保険会社と任意保険の保険会社が違う場合、加害者の任意保険会社が窓口となり、自賠責保険と任意保険の保険金がまとめて被害者に支払われます(一括払制度)。この制度を使うと、窓口が一本化されるため、被害者の手間が少なくなります。
  2. [不適切]。交通事故の被害者は、損害賠償額の確定前であっても、加害者が加入する自賠責保険会社に対し、治療費などの当面必要な費用を仮渡金として請求することができます。しかし、加害者には仮渡金の請求権はありません。
    仮渡金の金額は、死亡では290万円、傷害ではその程度に応じて5万円、20万円または40万円となります。
  3. 適切。自賠責保険は被害者の保護を目的としているため、厳格な過失相殺は適用されません。ただし、被害者に過失割合7割以上の重大な過失がある場合に限り、下表の割合で賠償額が減額されます(金融庁・国土交通省告示第6)。※減額割合まで覚える必要はありません。
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    自賠責保険では、自動車事故の被害者の過失割合が5割以上の場合、積算した損害額が保険金額に満たないときには積算した損害額から、保険金額以上となるときには保険金額から、被害者の過失割合に応じて2割から5割の減額が行われる。2024.9-14-3
    自賠責保険では、自動車事故の被害者の過失割合が5割以上の場合、積算した損害額が保険金額に満たないときには積算した損害額から、保険金額以上となるときには保険金額から、被害者の過失割合に応じて2割から5割の減額が行われる。2023.5-13-4
  4. 適切。自賠責保険は自動車一両ごとに加入するものなので、多重事故などで自動車事故の加害者が複数存在する場合、被害者はそれぞれの加害者の自賠責保険に対して保険金を請求することができます。このため、保険金の支払限度額は「通常の保険金額×加害車両数」となります。
    複数台の自動車による事故において、共同不法行為により他人の身体に損害を与えた場合、自賠責保険の保険金額に加害者の有効な自賠責保険の契約数を乗じたものが、保険金の支払限度額になる。2023.5-13-2
    複数台の自動車による事故において、共同不法行為により身体に損害を被った場合、自賠責保険により支払われる保険金等は、加害者の有効な自賠責保険契約に係る保険金額を合算した額が限度となる。2019.1-13-1
    複数台の自動車による事故において、共同不法行為により他人の身体に損害を与えた場合、自賠責保険の保険金支払限度額は、加害者の有効な自賠責保険の契約数を乗じたものになる。2015.10-13-2
したがって不適切な記述は[2]です。