FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問47

問47

相続税の申告および納付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 未分割の相続財産に基づく相続税を申告期限内に納付し、申告期限後に成立した遺産分割協議に従って計算した相続税額が、既に納付した相続税額よりも増加した相続人は、原則として、修正申告書の提出時に、その差額とあわせて、申告期限から修正申告書の提出日までの期間に応じた利子税を納める必要がある。
  2. 祖父の相続により財産を取得し、相続税の申告書を提出する必要がある父が、申告期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合、父の相続人である子は、原則として、父の相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に、父に代わり、祖父の相続に係る当該申告書を提出しなければならない。
  3. 相続税の延納の許可を受けるにあたって、延納税額が100万円以下で、かつ、その延納期間が3年以下である場合は、担保の提供が不要とされている。
  4. 相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により、納付方法を物納に変更する場合、当該物納に係る財産の収納価額は、原則として、当該物納に係る申請の時の価額による。

正解 1

解説

  1. [不適切]。国税を法定納期限までに納付しない場合には「延滞税」が課されます。修正申告時の不足額の納付は期限後納付に当たりますが、未分割財産について法定相続分とは異なる割合で分割された場合に行う修正申告では、延滞税や過少申告加算税が免除されます(相続税法51条2項)。その他、提出期限後に相続人の異動や死亡退職金の支給があった場合等に行う修正申告も同じ扱いです。
    【補足】利子税は、延納や物納、納税申告書の提出期限の延長の手続きを行った時に課されるものです。本問のケースはそもそも利子税の適用場面とは異なります。
    未分割の相続財産に基づく相続税を申告期限内に納付後、成立した遺産分割協議に従って計算した相続税の納付税額が既に納付した相続税額よりも増加した相続人が、修正申告書を納税地の所轄税務署長に提出してその差額を納付する場合、原則として、延滞税や過少申告加算税は課されない。2023.1-46-4
    未分割の相続財産に基づく相続税を申告期限内に納付後、成立した遺産分割協議に従って計算した相続税の納付税額が既に納付した相続税額よりも増加した相続人が、修正申告書を納税地の所轄税務署長に提出してその差額を納付する場合、原則として、延滞税や過少申告加算税は課されない。2017.1-47-4
  2. 適切。相続人だった父が申告をしないうちに死亡した場合、申告と納税の義務は子が引き継ぎます。この際、最初の被相続人(祖父)の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に申告するのは期間的に厳しいため、子は、本来申告すべきだった相続人(父)の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に、最初の被相続人(祖父)の分も合わせて申告すればよいとされています。
    祖父の相続により財産を取得し、相続税の申告書を提出する必要がある父親が、提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合、父親の相続人である子は、原則として、父親の相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に、父親に代わり、祖父の相続に係る当該申告書を提出しなければならない。2022.5-48-2
  3. 適切。延納について担保を提供する必要があるのは、延納税額が100万円超または延納期間が3年超である場合です。したがって、100万円以下かつ3年以下では担保は不要です(相続税法38条4項)。
  4. 適切。延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について延納から物納への変更を行うことができます。これを「特定物納」といいます。特定物納に係る財産の収納価額は、物納申請時の時価となります(相続税法48条の2第5項)。
    相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により物納に変更する場合、当該物納に係る財産の収納価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となった当該財産の価額となる。2023.9-47-3
    相続税の延納の許可を受けた者が、その後の資力の変化等により物納に変更する場合、当該物納に係る財産の収納価額は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎となった当該財産の価額となる。2019.9-46-4
したがって不適切な記述は[1]です。