FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問31

問31

法人税における役員給与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、法人はいずれも内国法人(普通法人)であるものとし、役員に対して支給される給与は、退職給与に該当しないものとする。
  1. 役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、当該役員賞与は、原則として、事前確定届出給与として届け出た金額を限度として損金の額に算入することができる。
  2. 新たに設立した法人が、設立時に開始する役員の職務につき所定の時期に支給した給与を事前確定届出給与として損金の額に算入する場合、原則として、設立後2カ月以内に納税地の所轄税務署長に事前確定届出給与に関する届出をしている必要がある。
  3. 役員に対して支給する定期給与を、事業年度開始の日から6カ月経過後に開催した臨時株主総会により増額改定した場合、原則として、増額改定後の定期給与は定期同額給与に該当せず、増額改定後に支給した全額が損金不算入となる。
  4. 業績連動給与として損金の額に算入することができる給与は、業務執行役員に対し、利益等の指標を基礎として算定される額を金銭で支給するものに限られ、株式や新株予約権により支給するものは当該給与に該当しない。

正解 2

解説

  1. 不適切。事前確定届出給与とは、事前に税務署に届出をして支払う給与のことです。届出どおりに支払えば全額を損金算入することができますが、届け出た支給額と実際の支給額が1円でも異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないこととなり、支給額の全額が損金不算入になります(法基通9-2-14)。
    役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与として届け出た金額を限度として損金の額に算入することができる。2023.9-31-3
    役員に対して事前確定届出給与として税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、当該役員賞与のうち、増額部分の金額は損金の額に算入することはできず、事前に届け出た金額を限度として、損金の額に算入する。2021.9-31-2
    役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与に該当せず、その支給額の全額が損金不算入となる。2020.1-30-3
    役員に対し、事前確定届出給与としてあらかじめ税務署長に届け出た金額よりも多い金額を役員賞与として支給した場合、原則として、当該役員賞与は事前確定届出給与に該当せず、その支給額の全額が損金不算入となる。2019.5-32-3
    事前確定届出給与において、あらかじめ所轄税務署長に届け出た金額よりも多い金額を支給した場合、損金の額に算入することができる金額は届け出た金額が限度となり、届け出た金額を超える部分の金額は損金の額に算入することができない。2017.9-31-3
  2. [適切]。事前確定届出給与を損金算入するには、新設法人であれば設立日から2カ月以内、既設法人であれば①株主総会の決議から1カ月以内と②事業年度開始から4カ月以内のいずれか早い日までに、納税地の税務署に届出が必要です(法人税法令69条4項)。
    新たに設立した法人が設立時に開始する役員の職務につき所定の時期に支給した給与を事前確定届出給与として損金の額に算入する場合、原則として、設立後2カ月以内に納税地の所轄税務署長に所定の届出をしている必要がある。2021.5-31-3
  3. 不適切。定期同額給与の改定は、特別の事情がある場合を除き、事業年度の開始後3カ月を経過する日までに行わなくてはなりません(法人税法令69条1項イ)。本肢のように3カ月を経過した日以降に増額改定したときは、その増額部分は定期同額給与として認められず損金不算入となります。損金不算入となるのは増額部分のみに限られ、増額改定後に支払われた全額ではありません。
    役員に対して支給する定期給与を、事業年度開始の日から6カ月経過後に開催した臨時株主総会により増額改定した場合、原則として、増額改定後の定期給与は定期同額給与に該当せず、増額改定後に支給した全額が損金不算入となる。2021.5-31-2
    役員に対する定期給与を、事業年度開始の日から6カ月経過後に開催した臨時株主総会により増額改定した場合、原則として、増額改定後の定期給与は定期同額給与に該当せず、増額改定後に支給した全額が損金不算入となる。2019.5-32-2
  4. 不適切。業績連動給与は、利益・株価・売上高といった客観的な指標を基礎として、業務執行役員の給与を「金銭」または「要件を満たす株式や新株予約権」で支給するものです(法人税法34条1項3号)。いわゆるストックオプション等による報酬も業績連動給与として認められます。
    業績連動給与は、業務執行役員に対し、利益等の指標を基礎として算定される額を金銭等で支給する給与であり、その支給をする法人が同族会社以外の法人である場合に限り、その支給額を損金の額に算入することができる。2023.9-31-4
したがって適切な記述は[2]です。